JIJICO

田沢 剛さん

弁護士

自爆営業、強制すれば強要罪に?

2013年11月20日

「自爆営業」の強制は労働基準法違反に

販売ノルマ達成に悩み、自爆営業をしてませんか?商品を販売する会社の従業員が、販売ノルマを達成するために自腹で自社製品を購入することを「自爆営業」といいます。最近になって、郵便局職員の「自爆営業」がクローズアップされているところですが、家電販売などの他の業種にも存在していたようです。ここにはいくつかの法的問題が生じます。

まず、この販売活動自体を勤務時間外に行うことを余儀なくされた場合には、サービス残業の問題が生じます。会社の職務命令で勤務時間外にやらざるを得なかったとしたら立派な時間外労働です。会社としては、労働基準37条により時間外労働に対する賃金を支払わなければならず、これに違反すると、同法119条1号により罰則が定められています。

次に、販売ノルマを達成できなかった際に、商品の買取りを強制されたり、その分の給与天引きが行われたとすると、賃金の「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」に反することになります。労働基準法24条1項では、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」として、賃金の「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」を定めています。

「通貨払いの原則」とは、「賃金は、自社製品や商品などの現物支給ではなく、通貨で支払わなければならない」というものです。自社の商品を買い取らせるとなると、通貨で支払われた、あるいは支払われる予定の賃金の一部が商品と取り替えられるのと同じですから、「通貨払いの原則」の脱法行為となってしまいます。また、給与天引きがなされると、「全額払いの原則」にも反してしまうことにもなります。これらの原則に違反した場合も、同法120条1号により罰則があります。

刑法上の問題ともなり、強要罪に該当する可能性も

そして、究極的には、刑法上の問題ともなり得ます。刑法223条1項は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する」として強要罪を定めています。

自社製品の買取りは、労働基準法違反の問題が生じるもので、到底、雇用契約における従業員の義務ということはできません。それにもかかわらず、「指示に従わないと査定上マイナスとなったり、給料を減額されたりするかもしれない」というプレッシャーを従業員に与えて、本来的に義務のない買取りを強制すると、労働基準法違反という犯罪にとどまらず、強要罪にも該当する可能性が出てくるのです。

企業のコンプライアンス意識が余りなかった時代には、おそらくは横行していたであろう「自爆営業」。しかし、いまだに行っている企業が存在するのであれば、この時代にそぐわず、社会的な信用を落としてしまうことになるでしょう。

\ この記事をシェアしよう! /

専門家に相談してみよう!

田沢 剛さん
弁護士

この専門家について

執筆記事一覧

関連記事&スポンサーリンク

最新記事や今おすすめ記事をお届けします。
解決!アスクミー JIJICOメルマガ

>今すぐ登録する!

「法律」のその他の記事

2018年11月12日 河野 晃さん
弁護士
ベランダ越しの受動喫煙で近所トラブル、悪いのはいつも喫煙者?
マンションなど集合住宅のベランダでの喫煙が、ご近所トラブルに発展するケースは少なくありません。タバコを吸うこと自体は違法ではないけれど、受動喫煙防止対策が強化される中、喫煙者のモラルやマナーが問われています。
2018年10月8日 中村 有作さん
弁護士
解決!アスクミー JIJICO
台風で自宅待機や休業になった場合、その日の分の給料はもらえる?法律のルールを解説
今年は日本各地で災害が多発しました。大雨、強風、地震等の災害が発生して停電となったり各地で相当の損害が発生しました。台風で自宅待機や休業になった場合に、給料はもらえるか?労働法26条の規定を詳しく解説します。
2018年9月26日 村越 真里子さん
夫婦問題カウンセラー
解決!アスクミー JIJICO
「別れさせ屋」に適法判決 工作を頼む前に考えておくべきこと
「別れさせ屋」はその行為の是非が問われやすいものです。法律上の判断にかかわらず、恋愛に卑怯な行為やうしろめたい行為は避けたいものです。
2018年9月25日 林 朋寛さん
弁護士
解決!アスクミー JIJICO
ふるさと納税の返礼品の規制より、住民税の税額控除を廃止すべき
「ふるさと納税」の「返礼品」の高額化について法改正で規制をしようという総務省の方針は、住民税の減収になる自治体の問題を残しており、適切なものとは思われず、むしろ住民税の控除を廃止すべき。

テーマ