JIJICO

藤本 尚道さん

弁護士

画期的な「いじめ防止対策推進法」

2014年3月14日

「いじめ防止対策推進法」が2013年9月から施行

画期的な「いじめ防止対策推進法」世間ではあまり認知されていませんが、「いじめ防止対策推進法」という法律が2013年6月に国会で成立し、同年9月から施行されています。この法律では、「いじめ」を「児童・生徒に対して、同じ学校など一定の人的関係にある他の児童・生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為で、その対象となった児童・生徒が心身の苦痛を感じるもの」と定義しています。これは、平成18年頃から文部科学省で使われてきた定義をほぼ踏襲するものですが、法律によってきちんと規定されたこと、また「インターネットを通じて行われるもの」も「いじめ」に含まれると明文化されたことには大きな意義があります。

「いじめ」を行う側が大きな顔をしてのさばる時代に幕が引かれた

そして、学校及び教職員が、学校全体で「いじめの防止」及び「早期発見」に取り組み、いじめを発見した際には適切かつ迅速に対処するよう法律で義務づけられたことは画期的です。もはや、学校・教職員には「気づかなかった」「知らなかった」などという言い訳が許されなくなったわけですから。他方、保護者も、自分の子どもが「いじめ」をしないよう必要な指導をし、また自分の子どもを「いじめ」から守り、さらには学校の「いじめ防止対策」に協力するという「努力義務」を法的に負うことになりました。ただし「保護者の義務」の存在が「学校の責任」を軽減させるものではありません。

校長及び教員は、在籍する児童・生徒が「いじめ」を行い、教育上必要があると認めるときは適切に「懲戒」を加えるように規定され、「いじめ」を行った児童・生徒を別の教室等へ隔離することで「いじめ」を受けた児童・生徒らが安心して教育を受けられる措置を講ずことができるほか、教育委員会は「いじめ」を行った児童・生徒の保護者に対し、その児童・生徒の「出席停止」を命ずることも可能となりました。「いじめ」を行う側が大きな顔をしてのさばる時代に幕が引かれたというべきでしょう。

「警察との連携義務」で「いじめ」は「犯罪行為」として明るみに

さらに、学校は「いじめ」が「犯罪行為」に該当するときは所轄警察署と連携して対処すること、また、児童・生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあれば直ちに所轄警察署に通報して適切に援助を求めることが義務化されました。「警察との連携義務」は重要なポイントです。これまで学校内が「聖域」とされ、学校・教職員が見て見ぬふりをすることで、数々の「犯罪行為」が隠ぺいされ、そのため、かえって「犯罪行為」が助長されてきた事実を忘れてはいけません。

人を殴ったり蹴ったりすることは「いじめ」の領域を超え、れっきとした暴行罪・傷害罪に該当します。金品を脅し取る「かつあげ」は恐喝罪ですし、力ずくで金品を奪えば窃盗罪や強盗罪が成立します。無理やり相手の嫌がる格好をさせて写真や動画を撮影する行為は強要罪ですし、これをネットに流せば名誉棄損罪なのです。これらの「犯罪行為」が、これまでは「いじめ」という言葉で誤魔化されてきましたが、今後はどんどん警察との連携が深まっていくものと思われます。

「いじめ防止対策推進法」はできたばかりの法律であり、学校現場にとっても初めてのことだらけで、まだまだ「手探り状態」が続いています。各自治体による「いじめ防止基本方針」の策定や、第三者委員会の設置なども今後の課題ですが、いずれにせよ「いじめ」を受ける児童・生徒の目線に立つという法の趣旨に沿った実務的な運用が期待されます。

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