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池上 司さん

精神科医

現代社会における「迷子ひも」の必要性

2014年7月4日

虐待など批判がうずまく「迷子ひも」。普及した背景は?

現代社会における「迷子ひも」の必要性最近、「幼児用ハーネス(迷子ひも)」が増えていることがテレビの情報番組で特集され、ネット上でも議論されることがありました。幼児用ハーネスとは、親と外出中に、幼児(特に1歳~3際くらい)を迷子や危険から守り、他人への迷惑を予防するために子どもの背につける「ひも」のことです。最近は、リュックにひもをつけたもの(ハーネスリュック)、バネ式のひもなどが出回り、ヒット商品も出ているようです。

迷子ひもが話題にされる理由は、お察しの通り、見方によっては犬か猿のような扱いで、「虐待」と取られる場合があるためで、通りすがりの人が親に注意することもあるようです。しかしネット上の記事を読んでいると、迷子ひもを使う親は好き好んで使っているのではなく、必要に迫られて、多くはやむを得ずそうしているのがわかります。注意されたり、偏見で見られたりすると親は傷ついてしまいます。

迷子ひもは、元々欧米で伝統的に使われていたものが輸入されるようになり、近年生活が欧米化してきたため、日本でも流通が増えているようです。都市部と近郊の住宅地にマンションが次々に増築され、大型スーパーに加えて、メガ(巨大)スーパー、メガショッピングモールなど、欧米で発展してきたもののコピーがどんどん建設されています。自動車も進化、普及し、交通量も増大しています。地下鉄、バスなど、交通網も整備されてきました。

活動性の高い子どもの場合、一瞬の隙に親から離れてしまうので、人ごみに紛れて迷子になったり、ものを壊したり迷惑行動をしたり、さらには、人さらいや自動車事故の危険にも常に気をつけなければなりません。このような人工的な環境の中で、安全を守りながら子育てをしていくのに、欧米人の合理的な「子育てグッズ」が受け入れられていると考えられます。

ハーネスを使用する子育てに、社会が理解を示すことも大切

1歳~2歳の子どもというものは、自立歩行を覚えて好奇心旺盛に本能的に動き回る年頃で、動く衝動を抑える理性がまだ育っていません。そして、一部に活動性の特に高い子どもがいるものです。一般に、男の子の方が多動で手が付けられない子が多いでしょう。特に障害があるわけではなく、単に健康で元気だから動きが激しいのです。平均的な子と違い、このような子は、親と手をつなぐこと自体を嫌がって手を振りほどいたり、我慢してつないでいても、何か面白そうなものがあると興味の赴く方へ飛んでいったりします。

また、注意欠陥多動性障害(ADHD;Attention Deficit /Hyperactivity Disorder)、自閉症など生まれつき障害のある特殊な場合も存在します。例えばADHDの場合、子どもはじっとしていることが困難で体がよく動きます。また関心が長続きせず、一つの対象からすぐに次の対象に興味が移ってしまうため、外出時にはひもでもつけておかないと、とても危なっかしい場合があります。何か関心を引くものを発見すると注意が一瞬にしてそっちの方に集中してしまい、これまでやっていたことは放り出してしまうためです。手をつなぐことは嫌がります。自閉症の子は、そもそも母親と情緒的なつながりが育ち難いという困難があり、母親と手をつなぐことに関心がなくて振りほどいてしまいます。

障害が有る無しに関わらず、嫌がっているのに無理に手をつないで歩くことは、子どもにとっても親にとっても大きなストレスです。現代日本の社会状況では、合理的な迷子ひもの使用は、今後もある程度増えていくでしょう。一人一人が上記のような子育て上の認識を持てば、迷子ひもに対する社会の見方も寛容になると思います。

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