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森田 伸幸さん

不動産コンサルタント

「敷金ルール」が賃貸不動産業界に与える影響

2014年9月3日

法務省、民法の改正に着手し「敷金ルール」づくりへ

「敷金ルール」が賃貸不動産業界に与える影響法務省が民法の改正に着手し、その中に賃貸契約の「敷金」や「原状回復」などの「敷金ルール」に関する項目が盛り込まれています。これまで民間の賃貸借契約は、いわゆる「契約自由の原則」により貸主と借主双方の合意に基づいて行なわれていました。その契約で「敷金」「更新料」「原状回復」といった不動産特有の慣習による条項が理解度や解釈の差を生み、それが原因でのトラブルが絶えませんでした。

ちなみに、東京都や国土交通省が「原状回復」に関するガイドラインを作成していますが、法的強制力はありません。

敷金ルールには敷金の保管先の明示や流用の制限も必要

「敷金」は、主に賃料支払いを担保する目的で、貸主が借主から預かる金銭のため、賃料の不払いが無ければ退去時に借主へ返還されるのが基本です。しかし、それを退去時の原状回復費用に充て(いわゆる「敷引き」)借主に返還されないことから、原状回復の解釈や範囲などが争点となっていました。そこで敷金ルールを作ることで「敷金」の定義を明文化し「原状回復」の範囲と程度を細かく規定すれば、これまでのトラブルは減少すると考えられます。

しかし、日本は住宅余剰状態で空室率が高くなってきており、賃貸経営が悪化している貸主が増加していくことを考慮する必要があるでしょう。賃貸経営をする場合に貸主や管理を委託された不動産業者は、預かった敷金を他の運用や運転資金に流用することができます。そのため、敷金返還請求を拒むのには「返したくても手元に現金がない」という理由も少なくなく、原状回復を盾にして何とか賃貸経営を継続していた貸主が、売却や競売に余儀なく追い込まれるケースも増えてくるかもしれません。そうなれば借主にも不利益が及ぶこともあるため、敷金ルールには敷金の保管先の明示や流用の制限なども加えることも必要だと考えます。

不動産業者と消費者の双方に意識変革が求められる

賃貸借を仲介・管理する不動産業者においては、「敷金ゼロ」「家賃保証」「借主によるリノベーション」「定期借家」など賃貸借に関するノウハウが多様化している中で新たに「敷金ルール」が作られるため、自己のブラッシュアップと貸主と借主双方への説明能力がこれまで以上に求められます。さらには、賃貸物件の売却や競売、貸主の相続などを想定した対策も準備しなくてはならないでしょう。「これまではこれで良かったから」というのは通用しなくなるからです。

また、消費者にあっては、貸主が変わる可能性や、管理する不動産業者が消滅するケースなどがあることを覚悟して賃貸契約をする必要があります。また、「入居開始時の物件状況を画像記録で保管する」「賃貸契約書の内容を十分に把握し更新や退去時に備えておく」といった借主も賃料支払い以外の責任があること自覚することが大切です。

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