JIJICO

池上 司さん

精神科医

死因1位「自殺」の衝撃、豊かな国でなぜ?

2014年11月26日

厚労省の人口動態調査で驚くべき死因の順位が

死因1位「自殺」の衝撃、豊かな国でなぜ?2014年度の厚労省の人口動態調査では、年齢階級別(5年毎に区切っている)の死因の順位をまとめています。驚くべきは「15~19歳」から「35~39歳」までのすべての年代層において、死因トップは自殺となっていること。青少年期から社会的には管理職にさしかかる、まさに上り坂にいる年代です。

しかし、少し注意してデータを見ていくと、「40~44歳」「45~49歳」では2位、「50~54歳」で3位、「55~59歳」「60~64歳」で4位と年齢が高くなるにつれて自死による死亡率は下がってきます。これは、年齢を重ねるに従って病気による死亡率が自死によるそれを上回って来るからです。

しかし、自殺者総数そのものは減り続けている

平成26年度版自殺対策白書(内閣府)によれば、日本人の総合的な死因の順位は、2014年度では、1位:悪性新生物、2位:心疾患、3位:脳血管障害、4位:肺炎、5位:不慮の事故、6位:自殺となっています。当然といえば当然のことですが、やはり病気等が多いわけです。死因の経年変化のグラフでは、悪性新生物、心疾患、脳血管障害が、いずれも30度ほどの急勾配でほぼ平行に右肩上がりに上がって来ています。食生活を始めとする生活の欧米化の影響があるでしょう。

これと対照的に、自殺、不慮の事故(天変地異等の影響により、波は加わる)、肝疾患、結核は、ほぼ横ばいで上下の揺れは小さいのです。特に自殺による死亡率は、平成15年あたりからかすかに減少し続けています。かつ自殺者総数そのものは平成10年に大きい上昇を見た以後は、平成22年以降、減り続けていますし、何より年齢階級別自殺死亡率は多くの年代で平成21年以降減少傾向にあるのです。それと、平均余命は年々延びて来ているわけです。

日本の競争社会が若い世代に与える苦悩の重圧を先鋭に示している

これらのデータから、日本人の自殺は多いが、特に増えて来ているわけではないとわかります。上記の3大死因の病死は老人になるほど多く、寿命を終える成人病と言って良いかもしれません。医療の進歩により、若い世代ではますます病気による死亡率は下がっているわけですから、元々むしろ減少気味にある自殺による死因が目立って来ているのです。自殺が増えているわけではないが、日本の競争社会が若い世代に与える苦悩の重圧を先鋭に示している統計といえるでしょう。

本年度の若年層における自殺による死因が増えているかに見える変化は、むしろ医療の進歩を反映する結果といえます。かつ、とりあえず平成21年以降の日本人の自殺はむしろ減少傾向にあります。精神科医としても、少しほっとさせられるところです。しかし、これが現在ふつふつと高まり始めている社会不安の影響でどう変わっていくかは予断を許しません。

専門家に相談してみよう!

池上 司さん
精神科医

この専門家について

執筆記事一覧

最新記事や今おすすめ記事をお届けします。
解決!アスクミー JIJICOメルマガ

>今すぐ登録する!

「くらし」のその他の記事

2018年1月22日 山崎 雅夫さん
仲人
解決!アスクミー JIJICO
「親の代理婚活」を考える!増加の理由や落とし穴は?
結婚相手との出会いとは、どんな出会いの形でも良いのです。たとえ親が見つけた相手でも。結婚相手との出会いはすべてが奇跡なのです。
2018年1月21日 白木 麗弥さん
弁護士
解決!アスクミー JIJICO
選択的夫婦別姓の行方はどうなる?「姓」とは結局何かという話
現在の制度では、結婚するとき、離婚するときにどちらの姓を名乗るべきか悩む場面がゼロではありません。海外では選択的夫婦別姓が主流になりつつあるなか、日本ではどうなってゆくのでしょうか。
2018年1月20日 加藤 豊さん
不動産コンサルタント
解決!アスクミー JIJICO
長期間住んでいる部屋、家賃の値引き交渉をしたいがどうすればよい?
同じ賃貸住宅に長く住む人にとって、今は家賃の減額交渉がしやすい環境にあります。交渉ノウハウや考え方を知って、快適な暮らしを手に入れましょう。
2018年1月19日 泉田 裕史さん
税理士
解決!アスクミー JIJICO
ふるさと納税、今後も争奪戦は続くのか?2018年の動向を考察!
すっかり定着した感がある「ふるさと納税」ですが、2017年4月に総務省から高額返礼品の自粛が要請されました。2018年はどうなるのでしょうか?

テーマ