JIJICO

田沢 剛さん

弁護士

東京五輪へ「全面禁煙化」条例化の是非

2015年2月8日

都内での飲食店や公共機関などの全面禁煙化を目指す

東京五輪へ「全面禁煙化」条例化の是非東京都の舛添要一知事は、平成32年(2020年)に開催が予定されている東京五輪に向けて、都内での飲食店や公共機関などの全面禁煙化を目指しています。

いわゆる「喫煙の自由」なるものが、憲法上の人権として保障されているか否かは置いておいても、他人の健康や平穏な生活を侵害する自由はないため、「喫煙の自由」が無制限に認められるものでないことは当然です。

健康増進法では、受動喫煙防止のために必要な措置を求める

平成15年5月に施行された健康増進法25条は「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう)を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。

この規定自体は、いわゆる施設管理者の努力義務を定めたものであって、罰則があるわけではありません。しかし、この規定を受けて、厚生労働省健康局長が各都道府県知事、各保健所設置市および各特別区長宛に発した平成22年2月25日付けの「受動喫煙防止対策について」と題する通知では「受動喫煙による健康への悪影響については、科学的に明らかとなっている」と明言するとともに、今後の受動喫煙防止対策の基本的な方向性について「多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべきである。一方、全面禁煙が極めて困難な場合等においては、当面、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進めることとする」としています。

条例で一気に強制するところまで可能か否かは議論の余地がある

そうすると、舛添知事の姿勢自体は、健康増進法の理想を追求するものということができますが、「全面禁煙が極めて困難な場合等においては、当面、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進めることとする」としている国の基本的な方向性を考慮すると、条例で一気に強制するところまで可能か否かは、なお議論の余地があるでしょう。

前述の厚生労働省健康局長通知は、その締めくくりの部分において「受動喫煙防止対策を実効性をもって継続的に推進するためには、社会全体として受動喫煙防止対策に取り組むという機運を醸成することが重要である」としています。

たばこが嗜好品として販売され、喫煙者も多く存在する状況下では、いくら東京五輪が開催されるといっても、全面禁煙の条例化には、社会全体としての機運の醸成が先であるといった、ソフトランディングの手法を探っていくことが相当ではないかと思われます。

このコラムを書いた専門家に質問できます

田沢 剛さん
弁護士

無料で相談してみる

「東京」のその他の記事

2017年7月26日 家田佳代子さん
コンサルタント
2020年に向けて どうやって乗り越える?テレワーク
2020年に向けて、テレワーク・デイという試みが始まりましたが、浸透には程遠い状況です。テレワークの実現に企業がすべきこととは?
2017年7月25日 小倉 越子さん
社会保険労務士
残業代ゼロ法案は働き方をどのように変えていくのか?
「残業代ゼロ法案」とは?「高度プロフェッショナル」とは?意味を正しく理解し適正な労務管理を行わなくては、残業代ゼロ社会は実現しないでしょう。
2017年7月25日 杉山 夏子さん
ファイナンシャルプランナー
賃貸アパートで大家さん業?それとも現金で持つ?相続対策のあり方
相続税対策として賃貸アパート経営を選ぶ人が増えていますが、現金で持っているよりも有効なのでしょうか?専門家が解説します。
2017年7月24日 林 朋寛さん
弁護士
刑法改正で性犯罪が厳罰化へ 性犯罪は減少するのか?
「強姦罪」から「強制性交等罪」に変更、厳罰化、「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」の新設、起訴は被害者等の告訴不要に。しかし、課題や問題も。
2017年7月23日 河野 晃さん
弁護士
共謀罪法施行 準備行為の規定があいまいで企業活動委縮の懸念
組織犯罪処罰改正法が施行されました。同法の改正については、日弁連をはじめ各種団体、学者らからの反対がありましたが、実際の運用はどうなるのでしょうか。
2017年7月23日 平松 幹夫さん
マナー講師
知らず知らずのうちにマナー違反?最低限知っておきたい食事時のマナー
日本人は食の安心・安全には敏感ですが「心を通わせて食べる」ことは苦手なようです。最低知っておきたい食事時のマナーについて解説します。
2017年7月22日 清水 泰志さん
経営コンサルタント
全成人に月8万円配布の提言が話題に。ベーシックインカムの利点と問題点
ベーシックインカムは企業中心の社会保障制度への代替案という意味だけではなく、人間の生存権をどう考えるかという理念的課題を含んでいます。
2017年7月21日 影山 正伸さん
社会保険労務士
東京都で時差BIZキャンペーン開始!通勤ラッシュ緩和につながるか?
東京都は7月11日から25日まで、通勤ラッシュ緩和のため「時差BIZ」キャンペーンを始めました。企業の多様性の受容が必要ですが、定着するでしょうか?

JIJICOメルマガを受け取りますか?

> 受け取る

テーマ