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北川 実さん

理数専科塾塾長

世界最強?研究者の好奇心を掻き立てる「地上最強生物」の正体

2015年12月17日

「地上最強の生物」とされるクマムシとは?

世界最強?研究者の好奇心を掻き立てる「地上最強生物」の正体「クマムシ」をご存知でしょうか。いや、「暖かいんだからぁ~」のフレーズで有名なお笑いコンビではなく、正真正銘、「虫」の方の「クマムシ」です。最近は「地上最強の生物」という称号から、知名度もかなり高くなってきました。そのクマムシ、遺伝子のDNAが他生物からかなり拝借したものであるという研究結果が発表されました。このことが「最強」の原因かもしれないという説です。

そこで、今回はこのクマムシについて詳しく説明します。クマムシとは、「緩歩動物門(かんぽどうぶつもん)」に属する生物の総称で、脚が4対8脚あります。「虫」といっても3対6脚の昆虫類とは全く異なり、大きさは0.1mm~1mm程度。クマムシの中だけでも1200種類以上が存在し、地球上土中から水中からありとあらゆるところに生息しています。姿形がなんとなくユーモラスなクマに似ていることから「クマムシ(英名water bear))と名付けられ、8本の脚でゆっくり歩くことから「緩歩動物」とされています。

クマムシ類だけでも1200種以上が存在

大体、「緩歩動物門」の「門」というのは、分類学上の言葉ですが、どの程度の範囲か理解している人は恐らく少数です。人間は「脊索動物門」という中に分類され、この中には、背骨のある脊椎動物すべて(魚もカエルもヘビも鳥も恐竜もサルも、もちろん人も全部)と脊索(せきさく 背骨の前段階のような原始的な器官)のあるナメクジウオやホヤの類まで全て含んでいます。「門」がどれだけ広い概念であることが分かるでしょう。

ところが、「緩歩動物門」は全て「クマムシ類」だけなのです。この中に1200種以上の多種多様な「クマムシ」がひしめいています。この事実からも、クマムシが独自性に富んだ「相当に変わった奴ら」であることがわかるでしょう。また、クマムシはいまだに現存する他の生物との関連性がはっきりせず、環形動物(ミミズやゴカイ等)と節足動物(エビやカニ、昆虫等)の中間に位置する生物ではないか、とも言われていますが、まだ仮説の域を出ません。

宇宙空間でも生き延びる規格外の強靭性

「クマムシは宇宙から来たエイリアンなのでは」と冗談を飛ばす学者もいるほどです。しかし、この「クマムシ宇宙由来説」も、クマムシのもう一つの面「強靭性」を知るとあながち冗談とも笑い飛ばせなくなります。実は彼ら、「ある形態」を取ると過酷な宇宙空間でも生き残ることができます。宇宙は真空で、温度差も数百度、それに、大変な量の放射線が満ちていて、人間であれば瞬殺されるほど極悪な環境です。実際、2007年にクマムシはその強靱性を確認するべく、ロケットに乗せられて宇宙空間に10日ほどさらされました。しかし、宇宙空間から回収され、地球に帰還後、無事に蘇って通常通り繁殖まで始めたそうです。

では、クマムシを最強にさせる「ある形態」とは一体何でしょうか。それは、水分が少なくなってきた際に、体を「樽型」に変えて休眠状態に入ることです。同様の現象はセンチュウやネムリユスリカ等にも見られることで、「乾眠」と呼ばれます。しかし、クマムシの場合はその状態になった時の強靭さが半端ではなく、高温は150度まで、低温はマイナス250度以下まで、圧力には6000気圧、数時間なら7万5000気圧に耐え、真空でも死ぬことはありません。ちなみに、地球最深の海底の圧力はアリアナ海溝水深一万メートルの1000気圧です。

また、放射線には平常時でもめっぽう強く、人の致死量の千倍の放射線を浴びても平気です。これが「地球生物最強」と呼ばれる所以となっています。もちろん、科学者たちはこの「強靭さ」の原因を研究し続けていて、仮に人間が身につけることができれば、宇宙にだって相当身軽に出かけることが可能となります。

クマムシの正体に世界中の研究者たちが白熱

そんなクマムシについて、先日も米ノースカロライナ大学から新たな研究結果が発表されました。クマムシの遺伝子であるDNAを解析したところ、他生物のDNAが17.5%も混じっていたというものです。これが本当であれば、大変なことです。我々を含めて他種の生物の遺伝子が混じってしまうことはまれにありますが、通常は2%以下。この紛れ込んだ遺伝子は役に立たず、眠ったままです。しかし、たまに病気を引き起こしたり、逆に進化を促進したりしているといいます。クマムシの場合、この紛れ込んだ大量の他生物の遺伝子が、クマムシの強靭さにプラスに働いているというのです。要はさまざまな生物の「良いとこ取り」という考え方です。

この研究発表が行われてすぐ、他の大学や研究者からは反対意見も出始めています。反論としては「都合が良すぎる。実際に細菌などの他生物が、実験中に混じってしまった可能性が高い」との主張です。現時点ではどちらが正しいか不明ですが、世界中の研究者たちをこれだけ白熱させるクマムシ、今後も目が離せそうにありません。

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