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藤本 尚道さん

弁護士

ごみ屋敷に“法の網” 条例制定へ 氏名公表、代執行も

2016年3月27日

ごみ屋敷の予防と解消を義務付ける条例が神戸市で制定

a9fe318a90dcff0254802ee827deea66_m いわゆる「ごみ屋敷」が社会問題化していますが、このほど神戸市が「新条例」を制定することが明らかになりました。
廃棄物などがたい積して悪臭や害虫の発生、火災発生のおそれがある建物を「ごみ屋敷」と位置づけ、住民に「ごみ屋敷」の予防と解消を義務付ける条例です。

「ごみ屋敷」の原因を作った住民に対しては、必要な助言・指導や勧告・命令のほか、市当局が強制的に廃棄物を撤去する「代執行」を行えるうえ、氏名公表の措置や過料の罰則についても条例に規定されるようです。

ごみ屋敷を取り締まるには法律的な壁がある

 実は、現在のところ「ごみ屋敷」を直接的に取締まる法律はありません。2014年に野党4党が「ごみ屋敷法案」を提出した経緯がありますが、法案成立には至っていない状況です。
もちろん、既存の法律による取締が可能な場面もあります。たとえば、廃棄物が敷地外の道路や他人の土地にハミ出しているような場合には、道路法や廃棄物処理法に基づく対処が可能です。
しかし、自己所有の建物や敷地内に収まっている限りは、行政当局が法的根拠もなくこれを強制的に排除することは出来ません。

 また、そもそも「廃棄物(=ごみ)」の定義が、必ずしも客観的には観念できないものであることが事情を複雑にしています。
たとえ第三者から見れば明らかに「ごみ」と言える物であっても、所有者本人から「ごみではない」と言い張られてしまうと、客観的な性状等だけを理由にそれらを「廃棄物」とみなすことには困難を伴います。
第三者にとっては「ごみ」でも、法的には一応「所有権」が存在しますから、納得しない所有者からこれらを取り上げることは「至難の業」と言うべきでしょう。

さらに、憲法29条1項は「財産権はこれを侵してはならない」と規定して「個人の財産権」を保障しています。
したがって「財産を保持する権利」は「ごみ屋敷」の住民にも憲法によって保障されていることになります。

ただ、しかし、他方で憲法29条2項は「財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律でこれを定める」として、財産権が「公共の福祉」との関係で一定の制約を受けることを明らかにしています。
すなわち「ごみ屋敷」の問題は、まさに「公共の福祉」に基づく財産権の制約場面として捉える必要があるのです。なお、憲法29条2項に言う「法律」には「条例」も含まれるとされています。

自治体単位で対応しなければならない現状

 このように「ごみ屋敷」を直接的に取締まる法律がないため、各地の自治体は、神戸市のように各自「ごみ屋敷条例」を制定し、それぞれの地域の実情に応じた「ごみ屋敷対策」を個々に行う必要があります。

逆に言えば「ごみ屋敷条例」を持たない自治体は、道路上の廃棄物については道路法に基づく行政代執行により撤去することが可能でも、敷地内にたい積されている廃棄物については、住民に対し「任意撤去」をするよう根気よく説得するより他に方法がありません。
その意味で、「ごみ屋敷対策」を進めるうえでは「ごみ屋敷条例」の制定こそがたいへん重要なアイテムとなります。

 ただ「ごみ屋敷」の発生は、「ごみを捨てるスピードより溜まるスピードの方が速い」「大切な物という思い入れが強くて捨てられない」「ごみを有用物と考えて外部から持ち込んでしまう」などといった、住民それぞれの「特性」が大きな原因となっていることを忘れてはいけません。

つまり、仮に「ごみ屋敷条例」に基づく行政代執行により、一旦は廃棄物がきれいに撤去されたとしても、一定の時間が経過すれば再び「ごみ屋敷」が再現される可能性が極めて高いということです。

ごみ屋敷の予防にまで踏み込んだ神戸市の新条例に期待

 この点、神戸市の新条例は、「ごみ屋敷」の「予防」についても住民に義務付けています。
予防にかかわる助言・指導においては、当該住民それぞれの「特性」に応じた対処が重要であるほか、行政当局のみならず地域の問題としてまさに「街ぐるみ」の対処が不可欠となるものと考えます。

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