JIJICO

小黒 健二さん

シューフィッター

歩くことの重要性と靴の関係について

2016年4月3日

歩くことが最も身近で手軽に取り組める運動

5~10歳の若返り、高齢者の身体機能が向上したわけ仕事の性質上、多くの60歳以上の方々と個別に「足と靴の相談」をさせて頂いていますが、それぞれの足の悩みや靴に対する思いや足の健康管理についてのやり取りを重ねていくと、次第に皆さんに共通する不安や課題が見えてきます。

例えば、平均寿命が延びて嬉しいと思う反面、健康を維持して自立を保ち、充実した生活を送り続ける事に対する将来的な不安が見え隠れするのです。
それは、少なからず私自身も感じていますし、恐らく年を重ねれば誰もが共有する思いなのでしょう。

将来的な健康面への不安の中には、様々な病気の他、メタボリックシンドロームやロコモーティブシンドローム、寝たきりや認知症というような生活習慣や加齢が原因とされる諸症状が含まれます。
ですから、それらに予防改善効果があると期待される運動や散歩やエクササイズとしてのウォーキングに関するアドバイスや解説には、皆さんとても熱心に耳を傾けてくれます。

そんな経験から、年齢を問わず最も身近で手軽に取り組める運動である「歩くこと」や「足の健康と靴」の関係を基本から解き明かすことによって理解を促し、正しい知識を啓発する事の重要性を改めて強く認識しています。

足腰が弱くなった現代人

裸足で昔ながらの生活している事で有名なアフリカのマサイ族には、足腰のトラブルが驚くほど少ないそうです。
一方、舗装され整備された歩き易い路面と、車や電車等による発達した交通手段を獲得した先進国に生活する私達の方が、ずっと多くの足腰のトラブルを抱えています。

もしかしたら整備され便利になった環境や道具に頼り過ぎるあまり、私達は長い進化の過程で獲得してきた足本来の能力を失いつつあるのかもしれません・・・。

足腰を強くするには歩くのが一番!

弱くなった足腰を鍛え直すには歩くのが一番です。
しかも、体の自立を維持して脳の機能さえも回復させる運動の効果が検証されるにつれ、歩くことの意義がますます見直されています。
ですから、足をサポートして歩行を軽快にする靴というものは、単に歩くために必要なものという位置づけでは無く、体全体をいつまでも元気に若々しく保つための必需品であり、そのことをもっともっと広く認知してもらうべきものであると考えています。

そこまで靴の重要性を訴えるのは、ウォーキングブームの陰で「ウォーキングをしたら返って足が痛くなった」とか「歩いて足首や膝を痛めた」などという声を頻繁に耳にするようになったからです。
そして、その原因を調べていくと、靴や靴の履き方、歩き方に問題があるという事が分かってきたのです。

足に合う靴を見つけるには、まず足を知ろう!

私達はほとんど足の機能や役割を知りません。
足の指や土踏まずや踵の機能と役割なんてよく分かりませんよね?
でも、足の機能と役割を知らないままで、本当に足に合う靴を見つけることが出来るのでしょうか?

五本に分かれた足の指、土踏まずに代表される足のアーチ構造、そして地面と体のバランスを担う土台骨としての踵。
五本の指が路面を掴み、踵のバランスを取って足首を支え、アーチ構造が地面からの衝撃を吸収しつつ推進力に変えている足の基本機能。
「足は第2の心臓」と言われ、歩く事で下半身に溜まりがちな血液の循環を担うポンプとしての役割も持っています。

足が人間の営みのなかで非常に重要な役割を持っていることが理解できるでしょう。
そんな足の健康を促進して維持する事は、いつまでも体の自立を失わないための大事な取り組みだと思いませんか?

足の機能を束縛する靴には注意

実は足が持つ素晴らしい機能を靴が奪ってしまう事があります。
そして、それは日常で無意識のうちに頻繁に起きているのです。
外反母趾や膝の痛みや扁平足や足裏の痛みや巻き爪やタコ、角質などの様々な足のトラブルが、実は足の機能を奪う靴によって起きている場合が多いからです。

ところが、足裏の痛みや膝の痛み、腰痛や背中の痛みに悩んでいても、足と靴や歩き方等を含めた生活習慣が原因の一つだという事に、多くの方が気づかないまま悩んでいるのではないでしょうか?

足のトラブルは生活習慣病?

靴は歩くための道具として発達してきたはずですが、同時にファッションや身分を主張する装飾品としての役回りも担ってきました。
欧米では貴族が履いた「パンプス」がその代表格の靴であり、今では女性の美しさを足元から引き立てるファッションアイテムとして確立しています。

目は装飾やデザインの美しさを求めますが、足の機能や形状を無視して美しさばかりを求めれば、当然そこで足と靴との適切な関係が損なわれてしまいます。
目が気に入って靴を購入したら、足が痛くなって後悔したという経験はありませんか?

好きな食べ物ばかりを食べていれば、栄養のバランスが損なわれて健康に害を与えるという事は、多くの方が理解されている事だと思います。
ところが、目が気に入った靴ばかり履いていると、足の健康に害を与えるというリスクはあまり認識されていないのではないでしょうか?
実は足のトラブルもまた、食生活と同じように生活習慣病としての側面を持っているのです。

足の機能を維持して促進する靴を履いて歩こう!

足の機能を促進して足の健康を維持するためには、基本的にはウォーキングシューズを選びましょう。
そして、足指の自然な動きを束縛しない靴先の形状と靴先の厚みや靴のサイズの正しい選択と正しい履き方にも気を配りましょう。
まず、足先の形状よりも靴先が細い靴は選ばない事。
そして、足指の先から靴先の間に1cm程の余裕寸が確保できる適正サイズを選択しましょう。

さらに、ここが大事なポイントなのですが、靴紐を靴先からしっかり締めて足が靴先にずれ込まないように余裕寸を維持して履いて歩く事が重要です。
また、足首や膝が痛くなり易いという方は、踵から足首周りを囲む靴のカカト部(カウンター)のしっかりした靴を選択して下さい。
場合によっては足首まで覆うハイカットのタイプを選ぶと足首と膝の安定性が高まるので効果大です。

正しい歩き方を意識してウォーキングし、健康になりましょう。

さあ、積極的に歩きましょう。
但し、正しい歩き方を意識して下さい。
つま先を上げて自然に踵から接地しましょう。
踵が接地する時には膝を真っすぐに伸ばす事がポイントです。
また、股関節を起点とした脚の振り子運動をイメージして歩きましょう。
そうすれば、自然と歩幅が大きくなる筈です。
少し遠くに視線を合わせれば、うつむき加減の姿勢も真っすぐに保てます。
さらに、両腕を軽く振って歩くと、体の左右へのブレが最小限に抑えられて上体が安定します。

そして、ある程度ウォーキングが負担なく出来るようになったら、階段や坂の上り下りや凸凹した自然の道をウォーキングコースに組み込みましょう。
ワンランクアップの筋力とバランス感覚が養われて、転び難い足腰を作るのに効果的です。

ウォーキングは最も基本的な運動です。
スポーツクラブやフィットネスクラブでスポーツシューズに履き替えるように、ウォーキングをする時にはウォーキングシューズに履き替えましょう。
最近では、ウォーキングの機能を取り入れたビジネスタイプの靴も多く発売されていますので、通勤やお仕事での外回りもウォーキングエクササイズとして活用する事ができます。

さらに、ウォーキングは足し算の効く運動ですので、10分歩いて10分休憩して、また10分歩いたとしても、20分歩いたのとほぼ同じ効果があります。
ちょっと辛くなったら積極的に休憩しましょう。
これで、「ウォーキングをしたら返って足が痛くなった」とか「歩いて足首や膝を痛めた」とかいう声が聞かれなくなる事を願っています。

ますます平均寿命が延びていく中、いつまでも自分の足で歩み続けましょう。

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