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岸井 謙児さん

臨床心理士・スクールカウンセラー

組体操の安全性が投げかける教育のあり方について

2016年4月9日

昔からではない組体操の高層化

組体操の安全性が問題になっています。
日本の教育に組体操が取り入れられたのは明治時代ごろからですが、昨今のような「高層化競争」は最近の特徴でしょう。力を合わせて危険を乗り越えるという組体操の持つ独特の魅力が「高層化」につながったのかもしれません。

そもそも運動会は体育祭とも言うように、学校集団や地域の祭りでもあります。日常生活の中の非日常性の行事として、地域や人々の精神的なエネルギーの回復の行事でもあり、危険を顧みず何段にも積み重ねられた高みを目指す子どもたちの姿が、保護者や関係者の気持ちを高揚させていることも理解できます。

危険性を「現場に判断を委ねる」というあいまいさ

もちろん学校行事としての運動会は子どもたちの成長につながる場でもあります。
健康安全を目的とした体育的行事として位置付けられており、その活動で事故を起こすことは望ましくありません。

しかし組体操の練習中などに起きる事故は日本スポーツ振興センターのデータによると年間8000件を超え、2014年度には全国の小・中・高校で起きた8592件の事故のうち、「ピラミッド」が1241件、「タワー」が1133件だったそうです。

それに配慮してスポーツ庁は、「演技種目や高さは一律に規制せず、原則として学校側の判断」に委ね、その上で「確実に安全でない場合は組体操を中止する」ことを求めた通知を出しました。

ただこの通知では「現場の判断に委ねる」と言う表現が、「事故があった場合は当該学校の責任だ」というニュアンスにもなり、現場としてはそのバランスに悩むことになります。
こういう状況の中で学校現場の指導に当たっている教員には何が求められているでしょうか。

経験と勘に頼らずに、科学的で継続的な指導法を

まず求められることは、科学的な安全指導の力量です。
とりわけ担当する教員自身が「どうすればピラミッドが崩れることがなく安全に取り組めるか」についての科学的な指導法を学ぶ機会が限られているのが実態です。
学習指導要領に含まれていない組体操について、先生方は大学でも専門的な指導方法を学ぶことはありません。
経験豊富な先輩の技能を体験的に学ぶか、本やインターネット等での情報を中心に見よう見まねで取り組むことが大半ではないでしょうか。
今後は経験や勘に頼るのではなく、組体操の科学的指導法の研究・開発と伝達・共有が求められていると言えます。

次に継続的・系統的指導の問題です。
学校行事として取組む場合、その準備には日々の教育活動の内の限られた時間しか割くことができません。
しかしピラミッドやタワーの場合、その安全性は子どもたちの体力に大きく左右されることは当然です。
そのためにも数週間の準備で行う一過的な行事としてではなく、時間をかけて子どもたちの一人一人の体力や筋力の確認や増強していく、継続的・系統的な指導が求められると思います。

新しい組体操のあり方とは

最後に組体操に対する視点の問題です。
一体感・達成感を子どもたちに体験させるために、「高層化」「巨大化」などの限られた方向だけでなく、もっと柔軟な発想が求められているのではないでしょうか。

日本で組体操と言えば、その秩序立った規律正しさが評価されますが、運動会の集団演技として最近よく取り上げられる「よさこい」などでは、コスチュームや音楽などの要素も取り入れながら現代的なマスゲームに工夫されています。

また東南アジアなどでは組体操を「スポーツ」としてとらえ、下にマットを敷くなどの安全対策をとっているそうです。
今後は危険を顧みない規律正しいマスゲームとしてだけでなく、子どもたちが表現する喜びに結びつく安全な表現活動としての組体操を模索することが求められているではないでしょうか。

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