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清水 泰志さん

経営コンサルタント

大戸屋お家騒動 同族企業のお家騒動に共通する原因とは?

2016年8月21日

大戸屋お家騒動 珍しくない同族企業のお家騒動

「女性が入れる定食屋」をモットーに国内外436店舗(2016年3月31日現在)を展開している大戸屋ホールディングス。昨年7月に創業者の三森久美氏が57歳で急逝後、会社を追い出される形となった息子の智仁氏(27)が、今年9月に臨時株主総会を招集し、委任状争奪戦を仕掛ける構えのようです。

このような企業を舞台とした「お家騒動」は、昔から繰り返されてきています。
過去10年間を振り返っても、ニトリ、赤福、円谷プロ、大王製紙、そして最近では大塚家具と枚挙にいとまがありません。
お家騒動を契機として経営体制が一新され、成長を加速することに繋がれば、荒療治ではありますが、経営革新のための一手段と考えることも可能です。
しかし、ほとんどの場合において、ブランド価値が傷ついたり中核的な人材を喪失したりすることで、企業の生命力を弱める結果となっています。

それにも関わらず、お家騒動が繰り返されるのは、ある共通した原因があるからです。
お家騒動とは、経営陣同志または経営陣と大株主との間で起きる支配権の争いのうち、特に同族企業において、親子間、兄弟間、あるいは創業家と経営陣といった親族を登場人物とするところに特徴があります。

経営者死去に伴う後継者争いは生前の経営者の不作為が根本的な原因

その最も典型的なタイプは、現経営者の死去に伴う後継者争いです。
大戸屋の場合もこれにあたりますが、創業者会長が生前に後継者を明確に指名し、ステークスホルダーに公表していないために、甥にあたる現社長と実の息子の間で故人の意思をどのように受け取るかという点において相違が生じているのです。
人間は誰しも、自分が現役を退く時期や不測の事態で急逝することなど考えたくないために、事業承継について早い時期から計画を立て実行に移している経営者は極めて少ないのが現状です。

したがって、お家騒動として世間の耳目を集める企業の経営者がたまたまその準備を怠っていたのではなく、規模の大小を問わず日本の経営者のほとんどが、このリスクについて自分自身の責任を果たしていないと言っても過言ではありません。
特に同族企業の場合には、経営者の立場と株主の立場の両面に渡って、周到な準備が必要であるために、いつ事業承継に着手したとしても早過ぎることはないのです。

しかし現実には、明確に後継者を指名しないとか、指名はしたが後継者がその地位を確固たるものにするための株式の移転が行われていないなどの不備を抱えた状態の企業が多いのです。
このように生前の事業承継への取り組みが不十分なことに加え、遺言の作成すらしていない現経営者もたくさんいます。
結果的に、株式の相続が会社の支配権を巡っての争続になり、経営の空走期間を生み出すことになっているのです。

現に起きているお家騒動を見ると、それぞれのケースにおいて複雑な事情が存在しているように見えますが、なぜ揉め事になるかと言えば、詰まるところ、既にいない経営者であり被相続人が、後継者の指名、株式の帰属、その他財産の分割について、生前に既成事実化をしていないことに尽きます。

上場企業の場合は親族を後継者にこだわること自体がトラブルの元に

ただし、特に上場企業の場合は、私企業といえども社会の公器としての性格が強いわけですから、創業家が直系の親族を後継者にすることにこだわること自体が、事業承継をトラブルの元にしている点も見逃せません。
現経営者が優秀であればあるほど、その子供が親に比肩する経営力を持っている可能性は低いにも関わらず、無理に後継者に指名することが、将来の企業存続を不安視する反対派の造反を招くことに繋がっているのです。

なぜ上場をするのか。その意味をよく考えて、あくまでも家業というスタイルにこだわりたいなら、そもそも非上場のままでいる道を選ぶべきでしょう。
また、創業家の支配力が強くなると、上場企業であっても、企業を私物化する意識が強くなり、結果的に金銭的な不祥事が発生しやすくなります。
そして、コンプライアンス(法令遵守)違反は、同族会社のお家騒動の契機になりやすいことは、佐川急便、赤福、大王製紙など過去の例を見れば明らかです。
そこで、コーポレートガバナンス(社内統治)の強化が求められるのですが、社外取締役の設置や内部通報制度の整備などのお決まりの打ち手だけでは、根本原因を絶つことは難しいと言えます。

生まれながらにして裕福な暮らしをしている二代目、三代目の後継候補者達は、一般人の生活感覚を失いがちで、質素倹約の励行が難しい。そのような人物が、後継者として人の上に立つ素養を身に付けるには、幼少時からの家庭教育が問われています。
そういう意味で、特に同族企業における事業承継やコーポレートガバナンスは、一朝一夕に出来ることではなく、何十年ものスパンで考えて取り組むべき経営課題であることを肝に銘じてもらいたいものです。

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