JIJICO

馬場 孝夫さん

経営コンサルタント

トラブル続きの国産航空機MRJ 日本の製造業の技術力劣化が原因か

2016年9月15日

国産航空機MRJが2日続けてトラブルに

207e63ffc9d6eccdda1eada981da2398_m半世紀ぶりの国産航空機としての注目を一身に浴びて意気揚々と米国へのフェリーフライトに離陸したMRJが、その直後にトラブルを起こし引き返すという事件が2日連続して起きました。
離陸後、空調システムアラームを検知し、電子部品を交換して、翌日再飛行を試みましたが、アラームを再検知し、再び引き返したのです。開発元の三菱航空機では暫く原因が分からず、空調装置の異常ではないかと考えられていましたが、その後、空調装置を監視するセンサの異常と特定されたとの発表がありました。

日本のメーカの連続したトラブルは何が原因なのか?

日本の製造業は、いまや世界第一の技術力を誇り、その製造品質も群を抜いて高い事は世界の認める所となっていますが、この事件を受けて、その技術力が劣化してきているのではないか、との声が聞かれます。
識者の中にも、日本のメーカは近年、三菱自動車の燃費偽装問題、タカタ製エアバッグのリコール問題等を例に挙げ、日本の製造品質は揺らいできているとの指摘をしている人もいます。

そして、その原因として挙げられるのが、業務の外部委託、非正規従業員の採用等に起因する「製造現場力の弱さ」です。
従来、日本の製造業は、終身雇用制度に守られた優秀な正規社員を確保してきました。
また、殆どすべての製造を同一企業内でおこなう内製化を得意とし、問題があれば、現場全員の力で解決してきました。
これが現場力の強さで、高品質の源泉なのですが、近年これが崩れてきたという指摘です。

MRJのトラブルは技術力劣化だけが原因ではない

しかし今回の事件から、もう一つの日本製造業の側面が見えてきます。
それは、航空機という、非常に高度な技術力を要する製品で起こったものであるという製品の観点です。
日本の得意とする製品である自動車の部品点数は、せいぜい約3万点と言われています。
それに対し、航空機の部品点数が、約100万点です。数十倍です。

そして、MRJを例にとると、その主要部品の約6割が米国等の海外製品なのです。
MRJが国産航空機といわれる所以は、日本企業が、全体設計を行い、航空機の機体設計製造を受け持った事であり、これは日本企業が航空機においても、単なる部品供給メーカから、製品メーカに脱皮するという大きな意味を持つわけです。

そのような観点でみると、今回の事件は、約100万点と言われる部品、それも6割を海外の企業から調達するという製品における品質管理を充分にできる企業として、日本の製造業が進化できるか、を問われている事件であるのではないでしょうか。
MRJのトラブルの元が、当初疑われていた、米国製空調装置そのものではなく、その状態を監視するセンサ装置の異常であった事は、これらの膨大な部品を組み合わせたシステムにおける品質管理を如何に実施するのか、という、これまで自社製品のみの品質管理に長けてきた日本企業にとっての未踏分野におけるチャレンジになっているのです。
現場力の観点からも、6割の部品を外部調達するシステム製品では、従来の考え方が通用しないのは当然で、システム製品ならではの現場力を構築しなければならないチャレンジャブルな製品分野であるのです。

MRJが成功することが日本の製造業を進化させることに

今回のMRJの技術面からの対応は、不具合原因の特定には戸惑ったものの、異常発生からその後の対処は、安全性を確保するという面で適切であったと思います。
MRJは、主翼外板部と骨組みを一体成形する事により従来の繋ぎあわせのための鋲を大幅に削減し、燃費を 20%向上させたハイテク機です。
是非、この未知の航空機製造分野においても、現場力、システム力を確立して、日本製造業の優秀性を見せてもらいたいものです。

このコラムを書いた専門家に質問できます

馬場 孝夫さん
経営コンサルタント

無料で相談してみる

「経済」のその他の記事

2017年7月24日 林 朋寛さん
弁護士
刑法改正で性犯罪が厳罰化へ 性犯罪は減少するのか?
「強姦罪」から「強制性交等罪」に変更、厳罰化、「監護者わいせつ罪」「監護者性交等罪」の新設、起訴は被害者等の告訴不要に。しかし、課題や問題も。
2017年7月23日 河野 晃さん
弁護士
共謀罪法施行 準備行為の規定があいまいで企業活動委縮の懸念
組織犯罪処罰改正法が施行されました。同法の改正については、日弁連をはじめ各種団体、学者らからの反対がありましたが、実際の運用はどうなるのでしょうか。
2017年7月23日 平松 幹夫さん
マナー講師
知らず知らずのうちにマナー違反?最低限知っておきたい食事時のマナー
日本人は食の安心・安全には敏感ですが「心を通わせて食べる」ことは苦手なようです。最低知っておきたい食事時のマナーについて解説します。
2017年7月22日 清水 泰志さん
経営コンサルタント
全成人に月8万円配布の提言が話題に。ベーシックインカムの利点と問題点
ベーシックインカムは企業中心の社会保障制度への代替案という意味だけではなく、人間の生存権をどう考えるかという理念的課題を含んでいます。
2017年7月21日 影山 正伸さん
社会保険労務士
東京都で時差BIZキャンペーン開始!通勤ラッシュ緩和につながるか?
東京都は7月11日から25日まで、通勤ラッシュ緩和のため「時差BIZ」キャンペーンを始めました。企業の多様性の受容が必要ですが、定着するでしょうか?
2017年7月20日 長谷川 満さん
家庭教師派遣
小中学生の親必見!夏休みの宿題は親子で楽しもう!
子どもたちにとって待ちに待った夏休みですが、忘れてはいけないのが大量の宿題。でも、工夫次第で子どもの成長につながる貴重な体験に繋がります。
2017年7月20日 大西 勝也さん
内科医
大流行の手足口病!大人にも感染するの?
手足口病が今年も大流行の兆しを見せています。手足口病はウイルス感染症で、乳幼児を中心に流行しますが、大人に感染することも。注意すべきポイントは?
2017年7月19日 目代 純平さん
ITコンサルティング、ITコンシェルジュ
ACジャパンの桃太郎CMが話題に!ネット上でのマナーをあらためて考える
桃太郎の物語を題材に「ネット炎上」の惨状を描いた公共広告が話題になっています。多くの人がネットを使うようになった今日、みんなが気持ちよくネットを使うためにはどんな配慮が必要か、考えてみたいと思います。

JIJICOメルマガを受け取りますか?

> 受け取る

テーマ