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河野 晃さん

弁護士

ワンセグ付き携帯電話はNHK受信料の対象となるのか?

2016年9月23日

高市総務大臣が地裁判決に異論を呈す

8月、さいたま地裁はワンセグ機能付き携帯電話を所有する人につき、NHKとの受信契約を締結する義務はないとの判断を示しました。
この地裁判決を受けて、高市早苗総務大臣は、「ワンセグ付き携帯など携帯用受信機も、この受信契約締結義務の対象であると考えています。」とこの地裁判決に異論を呈しました。
行政をつかさどる国務大臣が司法の判断に対して真っ向から反発したということになります。
この地裁判決に対して、NHK側は控訴しており、この裁判についての最終的な決着はついておりません。
この地裁の判断と高市大臣の見解、どちらが正しいのか検討します。

裁判上の争点は?

放送法第64条1項本文は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」と規定されています(ちなみに協会というのは、NHKのことです。)。
つまり放送法では、NHKを受信できるテレビなどの受信設備を『設置』した人は、NHKと受信契約をしなければならないと定めています。
この裁判では、テレビが見られる携帯電話を『持っている(携帯している)』ことが、「受信設備を設置した者」に該当するかどうかが争われたのです。
言い換えれば、『設置』という言葉に、『携帯』が含まれるかどうかという文言的解釈が争点となっているわけです。
意外と思われる方もおられるかもしれませんが、裁判ではこういった法律の文言や契約上の文言の解釈について争われることはままあることなのです。

さいたま地裁の判断

地裁の判決理由は多岐にわたりますが、まず前提として、ワンセグ機能付きの携帯電話は、放送法上の「協会の放送を受信することのできる受信設備」に該当するとしました。
そのうえで、「設置」が「携帯」を含むというNHK側の主張は、文理解釈上、相当の無理があると判断しました。
これに関するNHK側の多岐にわたる主張についても排斥しています。
理由として地裁が重視したのは、NHKとの受信契約によって発生する受信料が、租税的な側面を有するという点です。
その結果、受信料を得るためのルールは一義的明確にしなければならないという要請があるという判断をしました。
つまり、「『設置』という日本語に『携帯』という別の意味を含むような解釈をするのはけしからん」と判断したわけです。

地裁判断に対する評価

地裁判決を読ませていただいての個人的な感想は、「至極真っ当だな」というものです。
よく読むと、NHK側の主張に多少揺らいでいるようにもみえますが、理屈としても相当に説得的なものであり、高裁や最高裁でも覆らないのではないかと思いました。
判決中では述べられていませんが、実際にNHKがワンセグ機能付き携帯電話を所持している人から、どの程度受信契約を締結しているのかという実情も、もしかしたら背景にあるのかもしれません。
むしろ、判決を読んでみて、放送法という古い法律の欠陥と、法改正を待たずに携帯電話所有者に対する受信契約締結を行ってきたNHK側の勇み足が浮き彫りとなったように思います。
そう考えると、高市大臣の発言は、いささか思慮に欠けるものだったのではないかというのが個人的な感想です。

ただ、もちろん本件は係争中ですので、司法がどのような最終的な結論を出すかについては、一国民として注目していきたいと思います。

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