JIJICO

加藤 豊さん

不動産コンサルタント

「おとり物件」撲滅へ強硬策 悪質業者をネット広告から排除へ

2016年12月15日

それでも増えるおとり広告。ポータルサイト各社が悪質業者を締め出し

3c096044c573af847db8e0bf465571fd_s実際には取引できないにも関わらず、極めて好条件の不動産広告を打ち出しお客様からの問い合わせを誘う「おとり広告」。
古くからあるこの由々しき問題がインターネットの普及とともに急増、社会問題となっています。

もともと、業界の自主規制団体「公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会(不動産公取協)」の会員であり、「at home」「CHINTAI」「HOME’S」「マイナビ賃貸」「SUUMO」を運営する主要5社は、2012年3月に「ポータルサイト広告適正化部会」を発足、広告表示の適正化に乗り出しています。
その一環として2014年4月からは違反物件情報を共有し、上記5つのポータルサイトから違反広告を削除するなどの対応をしてきました。不動産公取協によると、2014年度に共有された全国の違反物件数は2,184件、2015年度は3,619件にのぼり、それらは速やかに削除されています。

しかしそれでも増加の一途をたどるおとり広告。
いたちごっこが続くこの状況に業を煮やし、ここにきて対応強化策を矢継ぎ早に打ち出しているのです。
具体的には、今月から違反広告を繰り返す「不動産事業者の情報」も共有、来月からは特に悪質な事業者に対して、主要5社のポータルサイトに1カ月以上すべての広告を掲載できなくするという強い措置を講じます。
規制対象は、不動産公取協に所属する5万社超の関東甲信越10都県の宅建業者です。
違反広告の多くは首都圏と近畿圏に集中しており、まずは首都圏から取り組みを開始させた格好です。

業界団体の不動産公取協が過去5カ年度(2011~2015年度)で、最も重い「厳重警告かつ違約金課徴」の措置を講じた件数は平均49件、そのうちインターネット広告による違反は75%→88.6%→89.7%→93.5%→93.9%と年々その比率が高まっています。
今回の規制強化は、物件広告の生命線ともいえるポータルサイト掲載を遮断することで、おとり広告を撲滅しようと動き出したのです。

消費者庁による取り締まり件数はわずか。おとり物件が放置されている現状が浮き彫りに

そもそも、おとり広告は宅建業法や景品表示法などに違反し、業界団体によらずとも罰金や(悪質な場合には)刑事罰が規定されています。
しかし、2016年3月に実施された消費者問題に関する特別委員会において、政府参考人として出席した消費者庁の審議官は「平成21年(2009年)の消費者庁発足以降、消費者庁が不動産おとり広告に関しまして措置命令を行ったものというものはございません」と述べています。
行政指導さえ、年に0~2件にとどまっており、事実上の機能不全に陥っているといえるでしょう。
不動産業者の数が多く、また、おとり広告の立証が難しいことなどから効率的に違反業者を取り締まれていないのが実態なのです。

井坂信彦衆議院議員(民進党)からは「こんなに堂々と道端やあるいはネット上に横行して放置されているということは、これは余り続くと、最後、消費者庁というのは一体何なんだと。…(中略)…不動産というのはそんなものだみたいに思っている人も多いと思いますよ」と強い指摘もありました。
存在意義を問われた消費者庁はこの事態を重く受け止め、翌月には不動産公正取引協議会連合会に対しおとり広告の取り締まり強化を要請、これが冒頭の規制強化につながったのです。

本当に残念なことですが、この経緯が示すことは公的な取り締まりが難しいこと、そしてまだまだおとり広告は根強く存在しそれらが放置されているという事実です。

消費者を軽んじる業者は淘汰される時代へ。物件の真偽を明らかにするサービスも

おとり広告は、架空の物件や、物件は存在する場合でも取引できないもの・取引する意思がないものを掲載することで消費者の気を引こうとします。
逆にいえば、そのような業者は(嘘の)物件情報しか差別化するものがないのです。

一昔前のように、業者と消費者の間にあった情報格差で商売する「モノ(物件)売り」の時代は終わり、不動産業界もサービスで差をつける時代になっています。
相場情報を提供する会社も複数あり、あまりにも安い物件は理由が問われるようになるでしょう。
空室状況を簡単に問い合わせられる「アキベヤ」(株式会社アパハウ)も9月に開始されました。
同社によると、予想を上回るペースで会員登録がなされており、消費者の関心の高さがうかがえます。

このように、消費者自身が広告の真偽を見抜いていく環境も整えられており、おとり広告に頼る会社は遅かれ早かれ淘汰されていくでしょう。
一部の業者が行う悪質な行為によって「不動産業界はこんなものだ」と一括りにされ、疑心暗鬼の中で不動産取引が行われるのは消費者にとっても好ましくありません。

不動産公取協やポータルサイト「HOME’S」も通報の専用窓口を設けています。
業界、ポータルサイト、消費者が一体となって、クリーンで健全な不動産取引の環境を醸成し、近い将来「おとり広告」が死語となる時代が来ることを強く望みます。

このコラムを書いた専門家に質問できます

加藤 豊さん
不動産コンサルタント

無料で相談してみる

「くらし」のその他の記事

2017年7月22日 清水 泰志さん
経営コンサルタント
全成人に月8万円配布の提言が話題に。ベーシックインカムの利点と問題点
ベーシックインカムは企業中心の社会保障制度への代替案という意味だけではなく、人間の生存権をどう考えるかという理念的課題を含んでいます。
2017年7月21日 影山 正伸さん
社会保険労務士
東京都で時差BIZキャンペーン開始!通勤ラッシュ緩和につながるか?
東京都は7月11日から25日まで、通勤ラッシュ緩和のため「時差BIZ」キャンペーンを始めました。企業の多様性の受容が必要ですが、定着するでしょうか?
2017年7月20日 長谷川 満さん
家庭教師派遣
小中学生の親必見!夏休みの宿題は親子で楽しもう!
子どもたちにとって待ちに待った夏休みですが、忘れてはいけないのが大量の宿題。でも、工夫次第で子どもの成長につながる貴重な体験に繋がります。
2017年7月20日 大西 勝也さん
内科医
大流行の手足口病!大人にも感染するの?
手足口病が今年も大流行の兆しを見せています。手足口病はウイルス感染症で、乳幼児を中心に流行しますが、大人に感染することも。注意すべきポイントは?
2017年7月19日 目代 純平さん
ITコンサルティング、ITコンシェルジュ
ACジャパンの桃太郎CMが話題に!ネット上でのマナーをあらためて考える
桃太郎の物語を題材に「ネット炎上」の惨状を描いた公共広告が話題になっています。多くの人がネットを使うようになった今日、みんなが気持ちよくネットを使うためにはどんな配慮が必要か、考えてみたいと思います。
2017年7月19日 五十嵐 かほるさん
イメージコンサルタント・ファッションプロデューサー
本格的な夏到来 加齢臭の10倍臭いと言われるミドル脂臭にご注意を!
「オトコ臭?」「ミドル脂臭?」体臭に気を配る男性へ!良い汗をかくことや食生活で「汗腺機能」を高めることに注力も!そして、一人で気にしていないで社内全員での臭い対策も提案してみては?
2017年7月18日 田中 正徳さん
次世代教育プランナー
子供向けのプログラミング教室活況!なぜ今子供にプログラミング?
プログラミングが2020年度から小学校で必修となるということで、すでに習いごと教室では活況を呈しています。論理性が養われるというのも人気の理由ですが、それだけでないプログラミングを学ぶことの恩恵について解説。
2017年7月18日 神野 沙樹さん
社会保険労務士
使い切れなかった有給休暇を会社に買い取ってもらうことは可能か?
働き始めると一度は意識したことがあるであろう「有給休暇」。有給休暇をすべて取得できる職場もあれば、全く取れない職場もあるという現実のなか、「有給休暇を使いきれなかったので、その分お金をください」ということは認められるのでしょうか。

JIJICOメルマガを受け取りますか?

> 受け取る

テーマ