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森田 伸幸さん

不動産コンサルタント

空き家入居に月4万円 空き家問題対策として成功するか?

2017年1月12日

空き家対策として月4万円の家賃補助

国土交通省は空き家に入居する子育て世帯や高齢者に最大で月4万円の家賃補助をし、受け入れる民間住宅には改修費として最大100万円を配ることを固めました。
対象となる空き家は事前登録が必要で早ければ2017年秋には開始されるとのことです。
増加する空き家問題解消と充足していない公営住宅を補完する狙いの施策ですが成功する可能性はあるのでしょうか。

空き家所有者の貸し出しリスク

借り手側である子育て世帯や高齢者の目線で見れば家賃が月4万円も補助されるとなれば是非利用したい制度と関心が高まるでしょう。
ただ家賃補助があるならばどんな空き家でも良いという人は少なく、多くの方は立地が良く利便性の高い空き家を期待するでしょう。

これに対し貸主となる空き家所有者の目線で見れば様々なケースを想定し検討すると思われます。
補助金を使って改修し登録した空き家を売却することになった場合の制約。
補助金を超える部分の家賃滞納のリスクと高齢者の孤独死による物件評価下落のリスク。
これらのデメリットとなる場合を考慮すると補助金をもらって登録することを躊躇する所有者も少なくないと考えられます。

似たような制度で熊本地震後に被災者へ家賃補助をする「みなし仮設」の募集を行ったところ、補助金の期限後の家賃滞納リスクや売却の自由度が奪われることを恐れて登録を渋る所有者が少なくなかったことを目の当たりにしています。

貸し手と借り手が上手くマッチングしない可能性

また不動産市場で流通性の低い空き家は補助金を使い登録することに活路を見出そうと積極的に登録が進む一方で、流通性が高い空き家は登録することでのリスクを恐れ登録に消極的になることが予想されます。

つまり借り手となる子育て世帯や高齢者が望む物件と空き家所有者が積極的に登録したい物件とが程よくマッチングしないと考えるのです。
補助金を利用して改修した空き家に借り手が付かない場合や好条件物件に入居希望者が殺到するケースもあるでしょう。

家賃補助だけでは空き家対策としては不十分

それ以外にも都市再生特別措置法による立地適正化計画との整合性の検証が求められますし、空き家登録物件に抵当権が設定されていた場合の競売や任意売却後の賃貸借契約継続の問題などの制度設計のディテールについても十分に検討しないと後々でトラブルが発生するのではないかと危惧します。

そもそも空き家が増加する原因は人口減少だけでなく、昨年も賃貸住宅建設が活況だったように新築建設が依然高推移で着工されていることも原因であり、ここにメスを入れなければ抜本的な解決にはなりません。
都市再生特別措置法で都市計画を見直すと同時に住宅総量の数値目標も設定することが不可欠です。
地方自治体ごとの住宅総数目標を設定した上で賃貸借は市場原理に任せ、どうしてもテコ入れが必要な地区や地域があればそこに公費を使って是正していくという策が適切と考えます。

結論を言うとこの施策は「絵に描いた餅」に終わる可能性が高く、受益を受けるのは改修を請け負うリフォーム会社と一部の空き家所有者になると予想します。

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