JIJICO

永野 海さん

弁護士

少年法の適用年齢を18歳未満へ その是非は

2017年2月19日

少年法の適用年齢を18歳未満へ

今月、金田法務大臣は、少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満に引き下げることを含む論点について、法制審議会に諮問しました。
少年法の適用年齢の引き下げについては、少年による凶悪事件が発生するたびに議論されます。
また、一昨年の6月には選挙権を18歳以上とする改正公職選挙法が成立し、その附則の中で、少年法との関係についても検討するとされていることも、議論に拍車をかけています。

選挙権の行使年齢と少年法の適用年齢を一致させる必要はあるのか

しかし、この問題には客観的な統計データなどに基づく冷静な議論が必要だと考えます。
そもそも、選挙権の行使年齢と少年法の適用年齢を一致させる必要はありません。
前者は、若者の政治参加を促す趣旨であり、後者は少年の更生や再犯防止の見地によるものですから、別個に判断されるべきものです。
そもそも、成人年齢が問題となる法律は少なくとも200本以上あるのであって、少年法だけを取り上げて選挙権との一致を問うことも不自然です。
たとえば飲酒・喫煙が自動的に18歳に引き下げられるわけではありませんし、他方現在15歳でもできる遺言が18歳からしかできなくなるわけでもありません。

少年事件が近年急激に減少している事実

そして、実は少年事件は近年急激に減少しています。
日弁連が2015年に行った調査によれば、少年事件は当時11年連続で減少しており、少子化の影響を除外するため、少年人口あたりの発生件数でみても、1983年のピーク時の63.8%も減少しています。
また、少年法の適用年齢の引き下げで問題となる18歳、19歳の少年事件ですが、驚くべきことに、そのうち殺人や殺人未遂の割合は0.03%、傷害致死も0.02%に過ぎません。
非行事件の半数以上は自動車運転過失致傷と道交法違反事件が占めています。
しかも、殺人事件などの重大犯罪については、現行法でも成人と同様に裁判員裁判で審理がなされますし、その是非はともかく、たとえ18歳であっても法律上死刑に処すことも可能なのです。

少年法の適用年齢が引き下げられても特別な配慮は不可欠

このような客観的事実のなかで、あえて18歳、19歳を少年法の適用から除外するメリットとはどのようなものでしょうか。
むしろ、被疑者本人が単なる捜査の対象でしかない成人事件と、少年鑑別所のなかで、様々な科学的調査のアプローチがなされる少年事件とのあまりに大きな手続の違いを日々目にしている立場からすれば、心配の方が遥かに上回ります。

2014年のデータによれば、少年事件に占める18歳、19歳の割合は実に約47%にも及びます。
そして、その大半が重大犯罪ではないことは前述のとおりです。
これらの膨大な数の非行事件が、現在の少年鑑別所技官や家庭裁判所調査官などによる、事件の背景や生育環境等による緻密な科学的調査の対象から外れ、成人事件と同様に粛々と刑罰を適用するだけの手続になったとしたらどうでしょうか。
再犯防止の見地からだけみても重大な問題が生じるのではないかと危惧します。

そのため、仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合でも、これらの年齢の事件に対する特別の配慮は不可欠です。
ドイツなどでは、18歳未満を少年と定義しながらも、18歳から20歳を「若年成人」と位置付けて、少年裁判所法を適用できることとしています。
日本でもそういう制度設計は最低限不可欠でしょう。

このコラムを書いた専門家に質問できます

永野 海さん
弁護士

無料で相談してみる

「法律」のその他の記事

2017年7月21日 影山 正伸さん
社会保険労務士
東京都で時差BIZキャンペーン開始!通勤ラッシュ緩和につながるか?
東京都は7月11日から25日まで、通勤ラッシュ緩和のため「時差BIZ」キャンペーンを始めました。企業の多様性の受容が必要ですが、定着するでしょうか?
2017年7月20日 長谷川 満さん
家庭教師派遣
小中学生の親必見!夏休みの宿題は親子で楽しもう!
子どもたちにとって待ちに待った夏休みですが、忘れてはいけないのが大量の宿題。でも、工夫次第で子どもの成長につながる貴重な体験に繋がります。
2017年7月20日 大西 勝也さん
内科医
大流行の手足口病!大人にも感染するの?
手足口病が今年も大流行の兆しを見せています。手足口病はウイルス感染症で、乳幼児を中心に流行しますが、大人に感染することも。注意すべきポイントは?
2017年7月19日 目代 純平さん
ITコンサルティング、ITコンシェルジュ
ACジャパンの桃太郎CMが話題に!ネット上でのマナーをあらためて考える
桃太郎の物語を題材に「ネット炎上」の惨状を描いた公共広告が話題になっています。多くの人がネットを使うようになった今日、みんなが気持ちよくネットを使うためにはどんな配慮が必要か、考えてみたいと思います。
2017年7月19日 五十嵐 かほるさん
イメージコンサルタント・ファッションプロデューサー
本格的な夏到来 加齢臭の10倍臭いと言われるミドル脂臭にご注意を!
「オトコ臭?」「ミドル脂臭?」体臭に気を配る男性へ!良い汗をかくことや食生活で「汗腺機能」を高めることに注力も!そして、一人で気にしていないで社内全員での臭い対策も提案してみては?
2017年7月18日 田中 正徳さん
次世代教育プランナー
子供向けのプログラミング教室活況!なぜ今子供にプログラミング?
プログラミングが2020年度から小学校で必修となるということで、すでに習いごと教室では活況を呈しています。論理性が養われるというのも人気の理由ですが、それだけでないプログラミングを学ぶことの恩恵について解説。
2017年7月18日 神野 沙樹さん
社会保険労務士
使い切れなかった有給休暇を会社に買い取ってもらうことは可能か?
働き始めると一度は意識したことがあるであろう「有給休暇」。有給休暇をすべて取得できる職場もあれば、全く取れない職場もあるという現実のなか、「有給休暇を使いきれなかったので、その分お金をください」ということは認められるのでしょうか。
2017年7月17日 岸本 貴史さん
人事労務コンサルタント、社会保険労務士
テレワーク・デイを7月24日に実施。働き方改革につながるか?
テレワーク・デイは、2020年の東京五輪を契機とした「働き方改革の実現へ向けた国民運動」です。企業はテレワークを活用することで、人材の確保や生産性の向上が期待できますが、実施に向けては事前に問題・課題の検討も必要です。

JIJICOメルマガを受け取りますか?

> 受け取る

テーマ