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金子 剛さん

弁護士

夫婦関係が破綻していても離婚が認められないことはあるのか?

2017年4月13日

裁判で離婚が認められるケース

526b6d45cde5b8379089ab03dea66d83_m長年築き上げてきた夫婦関係も、なんらかの出来事をきっかけとして、もはや修復不可能なほどに冷え切ってしまうこともあるでしょう。
夫婦の双方が、夫婦関係を続けていくことができないと判断して、離婚をしようと決意したとき、日本の民法では、夫婦の双方が合意をすれば、離婚をすることができます(これを「協議離婚」といいます。)。

しかし、夫婦の一方が、離婚に同意しない場合には、裁判所の調停を経て、裁判による離婚を求めることとなります。
裁判による離婚が認められる原因として、民法は、①「不貞な行為があったとき」、②「悪意で遺棄されたとき」、③「生死が3年以上明らかでないとき」、④「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」、⑤「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」、の5つを規定しています。
このうち、⑤「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、「婚姻関係が破綻しており回復の見込みがない場合」と解されており、ここに、配偶者の暴力や夫婦間の性格の不一致をきっかけとして婚姻関係が破綻した場合が含まれてくるわけです。

どのような状況でも要件を満たせば離婚は認められるのか?

さて、それでは民法が規定する上記①から⑤に当てはまるときには、どのような状況でも離婚が認められるべきでしょうか。
④に関して、例えば、妻が精神病に罹患し、昏迷状態にあり、しかも治癒の見込みがないという状況を想像してみてください。
このような状況で、夫からの離婚請求が認められた場合、妻は、夫からの支えを失い、今後の生活の目処がつかない苛酷な状況に陥ることもあるでしょう。
一方、この夫の立場から考えてみると、離婚が認められなければ、生涯、配偶者の看病を強いられることとなってしまいます。
不治の精神病にかかった配偶者との婚姻関係は、夫婦共同生活の実態もなく、「婚姻関係が破綻」した状況といえるでしょう。
しかし、離婚を認めるかどうかは、先ほどの例のように、道義的な見地からも非常に難しい問題を孕んでいます。

なお、民法は、離婚事由がある場合であっても、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」は、裁判所は離婚を認めないことができると規定しています。
そこで、たとえ婚姻関係が破綻していたとしても、離婚により夫婦の一方が苛酷な状況に置かれる場合、「婚姻の継続を相当」として、離婚を否定すべきではないかが問題となります。

婚姻関係が破綻しても離婚を認めなかった最高裁の判決

この問題に対して、最高裁は、次のような基準を示しています。
昭和33年の最高裁判決ですが、「民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途にその方途の見込みがついた上でなければ」離婚の請求は許さないと判示しています。
この最高裁判決の基準に従って、その後の裁判例では、生活保護の受給の可否や、財産分与により今後の治療費や生活費等に足りるだけの金銭給付が受けられるかどうかなどの事情が考慮され、離婚の可否が判断されてきました。

高齢化社会が進むことで離婚裁判が増えることが予想される

以上のように、夫婦の一方が不治の精神病に罹患した場合などには、たとえ婚姻関係が破綻している状況にあっても、離婚を認めることが相手方にとっても苛酷なこともあります。
上記引用した昭和33年の最高裁判決に対しては、主観的倫理観を押しつけるものであるという批判がされましたが、その後の裁判所の判断は、離婚後の療養や生活の保障に配慮しつつ、離婚を認容する判断が出されているところです。
また、アルツハイマー病に罹患した配偶者に対する離婚が認められた裁判例も出されています。
高齢化社会が今後も進んでいくことや夫婦観に対する社会通念の変化も相まって、同種の裁判が今後も増えることが予想されます。

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