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永野 海さん

弁護士

ヤマハが教室演奏の著作権料巡りJASRACを提訴へ。法的にはどうなのか?

2017年5月24日

ヤマハがJASRACを提訴へ

01a63e008898c8a2856e37e145ab8b2b_m日本音楽著作権協会(JASRAC)は、先日、2018年1月からは、著作権使用料の徴収対象に音楽教室を加える方針を発表しました。
実現すれば音楽教室の年間受講料の2.5%が徴収されることになります。
これに対して、音楽教室大手のヤマハ音楽振興会は、猛反発。
JASRACに対して、著作権使用料の支払い義務がないことの確認を求める訴訟を東京地裁に提起する方針のようです。

この一連の報道に対しては、少なからぬ市民が、音楽を学ぶ場にまで使用料を徴収することに違和感を覚えているようですが、法的にはどのように整理できる問題なのか解説します。

楽曲の演奏で著作権料が発生しないケース

まず音楽に関する著作権のなかでも、楽譜などをコピーして使いたいという場合、文科省が教育機関として認める学校などで授業として使う場合には、著作権法35条により原則として許可なく使用可能です。
また、今回問題となっているような楽曲の演奏については、学校以外の場も含めて、非営利で、聴衆から料金をとらず、演奏者などにも報酬が支払われない場合には、著作権法38条により許可なく可能です。
このため、たとえば文化祭での合唱や演奏などには通常許可はいらないことになります。

公衆に聞かせることを目的にする演奏かどうかが問題に

では、今回のような有料の音楽教室で著作物として保護された楽曲を演奏する場合はどうでしょうか。
先ほどの基準にあてはめると、音楽教室は営利目的であり、生徒から受講料も取りますので無許可では演奏できないようにも思えます。
しかし、実は著作権法が保護する「演奏権」とは、公衆に聞かせることを目的とする演奏に限られています(著作権法22条)。
ポイントは、「公衆」とは誰かということです。
裁判例では、不特定又は特定多数の者、と判断したものがあります。
パズルのようですが、素直に解釈すれば、不特定の人間が相手なら一人でも「公衆」。
特定の人間が相手なら多人数の時のみ「公衆」と考えることができます。

この点、カラオケ店や社交ダンス教室は既に使用料を徴収されていますが、カラオケ店は一人カラオケでも客は不特定の人が入れ替わり入ってきますから「公衆」と言えるでしょう。
社交ダンスの事例は裁判でも争われましたが、裁判所は、当該教室が特に条件設定もせず受講生を募集していることや、希望すればだれでも受講生になれること、営業時間中は予約さえできればいつでもレッスンを受けられること、個人授業と集団授業を生徒が自由に選べることなどから、不特定でしかも多数の者に対するもの、すなわち「公衆」に対する音楽著作物の再生だとして、JASRAC側の主張を認めました。

音楽教室に対する徴収は文化発展を阻害するという主張

問題は、音楽教室を社交ダンス教室と同様に考えることができるかです。
音楽教室でも上記の社交ダンス教室と同じような運営形態になっていれば同様の判断がなされる可能性は高いでしょう。
他方、自宅で特定の一人の生徒だけに個人レッスンをしているなど、生徒を選別して個人レッスン形式で運営している場合には、「公衆に対する演奏」にあたらないという判断がなされる余地もあるかと思います。

また、報道によれば、ヤマハ音楽振興会側は、「文化の発展に寄与するという著作権法の目的にも合致しない」という主張も行っているようですから、上記のような議論とは別に、JASRACの音楽教室に対する徴収行為は文化発展を阻害するもので権利の濫用である、というような主張も併せてなされることが予想されます。
このあたりについては最終的な裁判所の判断に注目です。

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