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久保 逸郎さん

ファイナンシャルプランナー(FP)

教員も生徒も部活動がブラック化 どうすれば改善できる?

2017年7月13日

教員にとっても生徒にとっても部活動がブラック化に?

最近福岡で中体連の野球の試合を観る機会がありました。中学3年生にとっては最後の大会になるため、そこには一生懸命にプレーをする子ども達の姿が見られましたが、しかし、それ以上に目に付いたのは過熱してしまっている大人の姿です。

顧問(教員)がチャンスの場面でさえ打者が打つことより、疑似盗塁のようなサインを出して走塁技術で得点を狙わせたりするなど、相手のミスを誘うようなプレーを積極的に指示していました。

なかには次の試合までの待機時間に、甲子園で有名な歌「栄冠は君に輝く」の映像をスマートフォンで流して自身の気持ちを盛り上げている顧問の姿まで。部活を率いる顧問が子ども達の健全な育成よりも、顧問の趣味と勝利至上主義の方向に向かってしまっていて、まさに子ども達を使って高校野球の真似事をさせているような印象を持ちました。

部活動の指導に過熱する教員の存在

最近は「ブラック部活」という言葉が生まれ、NHKのクローズアップ現代などでもこの問題が取り上げられるほど社会問題化していますが、このブラック問題を取り上げている報道は、部活動の指導を行う教員の労働時間の観点で取り上げらわれているものが多くなっています。

その一方で、現実的には部活動の指導を趣味にしてしまっている過熱した顧問が、子ども達の健全な育成よりも勝利至上主義に向かってしまって、それがブラック部活を作る原因になっているケースも多いのです。

教員の負担軽減のために、部活動に外部指導者の導入が検討されているところですが、このような顧問の過熱を防ぐことを含めて考えなければ、ブラック部活問題の根本的な解決には結びつかないでしょう。

過去の経験を基に指導してしまうことで古い体質が残ることに

このように顧問が過熱してしまうケースは、その顧問自身が学生時代に取り組んでいた競技を指導している場合に起こりやすいのではないでしょうか。全く取り組んだことが無い競技を指導するケースに比べて、技術的な指導が容易であるというメリットがある一方で、その教員が最新の理論を学ぶことなく過去の経験を基に指導してしまうので、古い体質まで生徒に押し付けてしまうことが起きています。

いまだに全員坊主頭の野球部が存在していたり、昭和の頃に流行った漫画『アタックNo.1』で描かれていたような地獄の特訓を課していたり、顧問の指示通りに動く生徒を是としているようなケースはその典型的な例で、優秀な兵員の確保を目的として部活動が行われていた昭和時代の体質がまだ残ってしまっていると言わざるを得ません。

ブラック部活問題の背景には日本人独特の価値観がある

また、このブラック部活問題の背景には、「成果を上げるためにはもっと時間をかけなければいけない」と考えがちな日本人の思考も背景にあると考えられます。

近年は欧米などの国々と比較して、日本企業の労働生産性の低さが知られるようになってきました。そのため企業経営者の間では従業員を長時間働かせるよりも、早く帰らせたほうが生産効率は高くなり、成果の向上に繋がることが知られてきました。

しかし、部活動の現場においては、いまだに「成果を出すためにはもっと練習を」というような指導が行われているケースが多いものです。これには睡眠時間など何かを犠牲にしながら、歯を食いしばって頑張ることを良しとする日本人独特の価値観が背景にあると思います。

しかし、これから社会に出ていく子ども達はどちらかといえば短時間で成果を出すことが求められるでしょう。そのため部活動の指導を行う顧問の意識が変わっていかなくてはいけません。

効率性よりも全体を管理して統率したがる指導者

全体を管理して統率したがる指導者が多く、全員で一緒のメニューをこなそうとする傾向があることも、部活動の時間を長くしてしまう一因になっています。

たまにテニス部の練習を見かける機会がありますが、テニスコートの周囲で声を出しながら順番を待っている生徒が多くいます。例えば班分けをして、そのような待ち時間にコートの外でフィジカルトレーニングやボレー練習などを行うようにすれば、練習時間内の運動量を増やすことにも繋がりますし、全体の時間短縮を行うこともできます。

筆者は社会人アメフトチームのコーチをしていますが、効率の良い練習メニューを組めば、体力のある大人でも2時間程度の練習で相当きついものになります。身体が出来上がっていない中学生・高校生ではそこまで動くことはできないはずです。

もしも部活の練習が長時間になってしまっているのなら、内容に問題があると考えて練習メニューを見直してみたほうがよいかもしれません。トレーニングやリカバリーなどに関する理論は年々驚くほど進化していますので、専門家に助言を求めてもよいでしょう。

運動系・文化系のどちらにおいても、けっして勝利至上主義に陥らず、また、昔のままの古い知識で指導を行ってしまうことがないよう、部活動の指導を行う教員が知識を身に付けていくことは、ブラック部活問題の解決に必要になってくるのではないでしょうか。

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