JIJICO

田沢 剛さん

弁護士

衆議院解散権は誰の権限?大義は必要?

2017年9月21日

解決!アスクミー JIJICO

衆議院の解散権を有しているのは「内閣」であり、内閣総理大臣ではない

憲法第69条は、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は新任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」と定めております。この規定に基づいて10日以内に衆議院が解散されたとしても、憲法第70条が「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」と定めているのですから、衆議院の信任を失った内閣は一旦は消滅する運命にあること、裏を返せば、内閣は衆議院の信任に依拠していることを示しています。

また、憲法第7条は、政治的権能を有しない天皇が「内閣の助言と承認」により国事行為を行うものとされており、国事行為の中に「衆議院を解散すること」も列挙されていることから、衆議院を解散する実質的な権限を有しているのは内閣であると言われています。

いずれにしても、衆議院の解散権を有しているのは、「内閣」であって「内閣総理大臣」ではありません。政治家やメディアにおいて、しばしば「衆議院の解散は内閣総理大臣の専権事項」と説明されているのは、実は誤りです。

内閣による解散権の行使は自由に行えるものなのか?

ところで、衆議院の解散は、憲法第69条の場合に限定されません。総選挙を通じて国政上の重大な問題について民意を確かめるため解散制度を利用することは、民主主義に適うものとして、限定すべき理由がないからです。その意味で、内閣に衆議院の解散権を認めることは、是というほかありません。憲法典上、この点について明示的に規定した条項が見当たらないため、憲法に欠陥があるとの指摘もありますが、大きな問題とはされてはいません。

では、内閣による解散権の行使は、自由になし得るものなのでしょうか。解散権の行使が憲法第69条の場合に限定されないと解釈する根拠に立ち返って考えれば、自ずと答えは出るはずです。国政上の重大な問題について民意を確かめるという民主的機能に根拠づけられた解散権は、そのような機能が期待される政治的状況が生じた場合に限って行使が許されると解釈されることになりますから、大義のない解散など認められません。

ただ、司法権を有する裁判所は、衆議院の解散の有効性の判断は高度に政治的な問題であるため、裁判所が判断すべき問題ではなく、選挙等の民主政の過程で解決すべき問題としていますので、結局のところ、大義のない解散であったとしても、そのことを問い質すのは選挙しかないことになります。

来るべき臨時国会の冒頭で、衆議院が解散されることとなった場合、そこに大義があるのか否かを含めてこれまでの政権の有り方が問われるでしょうし、昨今の国際情勢に鑑み得れば、今後の我が国のあり方を占う重大な選挙となることは間違いないといえるでしょう。

専門家に相談してみよう!

田沢 剛さん
弁護士

この専門家について

執筆記事一覧

最新記事や今おすすめ記事をお届けします。
解決!アスクミー JIJICOメルマガ

>今すぐ登録する!

「法律」のその他の記事

2017年10月21日 田沢 剛さん
弁護士
解決!アスクミー JIJICO
衆議院総選挙後に憲法改正という流れが一気に進んでしまうのか?
憲法改正の議論が活発化すること自体は問題視するに及びませんが、国家の根幹に関わる問題を数の力だけで一気に推進するとなれば、民主主義の理念と相反すると言えます。
2017年10月20日 金子 清隆さん
ITコンサルタント セキュリティコンサルタント
解決!アスクミー JIJICO
最新版 サイバー攻撃の現状とその対応
ITにより生活環境の中で様々な利便性が向上する一方、サイバー攻撃に晒されていることを認識した上で、自分の生活を守るための対応を意識すべきです。
2017年10月19日 小林 一也さん
経営コンサルタント
解決!アスクミー JIJICO
初めての海外赴任が決まったら試して ほしい3つの考え方
海外赴任は習慣や文化の異なる人々と協働することを意味します。ビジョンを忘れず、怒らずに対話し、共感し合おうとする考え方がその助けとなります。
2017年10月19日 半田 望さん
弁護士
解決!アスクミー JIJICO
白票・棄権は選挙でどのような意味を持つのか?
選挙において誰に投票していいかわからない、投票したい候補者がいないという理由で投票に行かなかったり、白票を入れるということがありますが、これは選挙における意思表示として適切でしょうか。棄権や白票が選挙においてどのような意味を持つのかを考えます。

テーマ