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加藤 豊さん

不動産コンサルタント

「安心R住宅」が一転、売主に不利な制度へ。事実上、専任媒介を強制

2017年11月13日

解決!アスクミー JIJICO

「安心R住宅」で適正な中古住宅が探しやすくなる。2018年4月から運用開始

国交省は中古住宅の取引を活発化させようと、2018年4月から「安心R住宅」制度の運用を開始します。

これは、中古に対する「不安」「汚い」「わからない」というマイナスイメージを払拭すべく、一定の基準に合致した中古住宅に限り、国が定めた商標「安心R住宅」を使うことができる制度です。

買主にとっては、物件情報を探す際に「この物件は『安心R住宅』のマークが付いているから国の基準に適合した住宅だ」とわかるようになり、適切にメンテナンスしてきた売主にとっては、「住みたい」「買いたい」家であることを訴求できる効果が期待されます。

安心R住宅に適合するためには、耐震基準やインスペクション(建物状況調査)をクリアし基礎的な品質があることを求められます。

また、基準に合致したリフォームがなされ(未実施の場合はリフォーム提案書を付属させ)、さらに住宅に関する書類の保存状況や買主の求めに応じた情報開示がなされるなどの要件が課せられます。

本制度は11月6日に告示公布されており、今後、事業者団体の審査・登録を経て、2018年4月より安心R住宅の運用が開始される予定です。

なお、国が直接本制度の実務を取り仕切るのではなく、実際の運用や認定要件の細かな設定は、不動産会社を束ねる各業界団体が行います。国の審査を通過した団体に所属する不動産会社のみ「安心R住宅」のマークを使うことができ、その代わり不動産会社は団体による指導や監督を受けることになります。

安心R住宅として売り出したいなら、売却依頼する不動産会社は1社に限定される

国土交通省は、10月30日より事業者団体や不動産会社に対して説明会を全国6カ所で実施、細かな制度内容も明らかになってきました。

基本的には中古住宅の取引を適正化しようとする制度であり歓迎したいものですが、その中で釈然としない項目が一つあります。それは、安心R住宅のロゴマークを使用するには「専任媒介契約を締結し、売主の承諾を得る」という記載がなされていることです。

結論からいえば、これは売主の選択肢を大幅に狭め、適正な取引から遠ざかってしまう懸念があります。

不動産取引では基本的に、売主が「家を売却したい」と依頼する元付仲介業者、買主が「家を買いたい」と依頼する客付仲介業者に分かれます。売主と買主の間に2社の不動産仲介業者が入る構造です。

そして売主は、複数の不動産業者(元付仲介業者)に売却を依頼する場合には「一般媒介契約」を結び、1社に限定する場合には「(専属)専任媒介契約」を結びます。

つまり、「専任媒介契約を締結し、売主の承諾を得る」という要件は、売主に対して「安心R住宅のロゴマークを使いたいなら、1社にしか売却依頼をしてはいけません」と言っていることと同義なのです。

もちろん、専任媒介契約を結んでも、例えば3カ月後に契約が切れれば別の業者に依頼することは可能です。しかしそれでも同時期に依頼できるのは1社に限定されることになるのです。

売りやすい物件を苦労して手に入れた元付仲介業者は、「囲い込み」したくなる?

元付業者の立場としては、1社にのみ限定して売却依頼をされる専任媒介契約は“おいしい”契約です。

他の元付仲介業者との競争がなく、契約は必ず自社を通ることになるからです。なにより、自社で買主までみつけてくれば両手取引となり、売主・買主双方から仲介手数料が取れ報酬が2倍になります。

さらにこの専任媒介契約は、社会問題にもなった「囲い込み」のきっかけになる契約方法です。つまり、買主をみつけた客付業者からの問い合わせに対して「既に申し込みが入っています」と伝え、自社で買主を見つけることにこだわるのです。

「安心R住宅制度を使うためには、専任媒介契約をしないといけないんです。国が決めていることです」といって、専任契約を取る営業手法も容易に想像がつき、売主の売却方法の選択肢を大きく狭める制度になっているといえます。

安心R住宅は、基礎的な品質を国が認めた家とも言え、売りやすい住宅です。

そしてその認定を受けるには、売主側の不動産会社がインスペクション(建物状況調査)を実施したり、リフォーム実施(または提案)をしたり、書類の確認をしたりと、これまで以上に手間がかかります。

つまり、売りやすい物件を、手間をかけて売却依頼を勝ち取った仲介業者が、専任媒介契約を結んで自社限定で売りに出すことになります。どうしても、囲い込みへのインセンティブが高まるのではないかという一抹の不安を覚えざるを得ません。

団体ごとに認定基準が違うから混乱?専任媒介に限定する合理的な理由がない

専任媒介や両手取引自体が必ずしも悪いというわけではありません。しかし、安心R住宅制度を専任媒介契約に限定する意義がなく、何を目的としているか不明瞭です。

国交省の住宅局住宅政策課によれば、同じ物件に安心R住宅のロゴマークが複数付くと買主が混乱すると説明しています。また、複数の元付仲介業者に売却依頼する場合、売買契約が結ばれたことを知らない元付業者がロゴマークを使い続け、一元管理できない懸念があるといった理由付けもしています。

先に説明した通り、安心R住宅制度は、不動産業界の団体がそれぞれリフォーム基準などの要件を別に定めるため、「安心R住宅」マークがついていても、不動産会社が所属する団体ごとに細かな違いが生まれます。それを指して「買主が混乱する」と説明しています。

しかし、だからこそロゴマークに「一般社団法人〇〇」などという形で、どこの団体が定めたものかを併記するようロゴマーク使用マニュアルにも定められています。それが「混乱」を招くとは到底思えませんし、むしろ複数のマークが付くことで買主へ正確な制度内容を知らせるきっかけになります。

そもそも、これを混乱するというのであれば、各団体に基準の策定を任せるという制度自体を改善すべきでしょう。

一元管理ができないという懸念も、要は取引終了後から物件情報が削除されるまでタイムラグが生じるという問題です。

売主側の仲介業者を1社に限定する専任媒介の場合にも、媒介契約の期間が切れてから物件が削除されるまでどうしてもタイムラグが生じるものであり、専任媒介に限定する合理的な理由にはなり得ません。

実際の運用をみて「育てていく制度」。中古の不動産取引が適正化することを期待

2018年4月から開始する安心R住宅。時を同じくしてインスペクションを促す改正宅建業法も本格始動します。

中古住宅の流通を促進させる制度が矢継ぎ早に実施される中、今後ますます適正な不動産取引環境が整うことを期待します。

一部に懸念はあるものの、今回定められた安心R住宅制度は、「育てていく制度」です。今後、実際の運用状況を見ながら改善を繰り返すことを前提としてスタートさせることを国交省も強調しています。

例えば現制度では、耐震性や既存住宅売買瑕疵保険の付保など基礎的な要件をクリアする住宅が対象です。今後は、省エネ基準を満たす物件を「安心R住宅プラス」としたり、長期優良住宅並みの住宅は「安心R住宅プレミアム」などとカテゴリーを分けることで、買主のニーズに合わせた中古住宅の選択肢が広がることも予想されます。

あわせて、本記事で指摘した媒介契約の限定性を撤廃するなど、実務面も含めて、買主・売主双方にとって最適な制度へ改善されていくことを大いに期待します。

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