JIJICO

加藤 豊さん

不動産コンサルタント

2018年4月からインスペクション本格化。買主のメリットや注意点は?

2018年2月19日

解決!アスクミー JIJICO

不動産取引にインスペクションが登場!家を買う前に建物の調査ができる

2018年4月1日より「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」(改正宅建業法)が本格施行されます(一部はすでに施行済み)。

この法律の中で目玉となっているのが、インスペクション(建物状況調査)です。インスペクションとは、家を買う前に、建物状況を専門的に調査することをいいます。4月から始まる不動産取引では、このインスペクションが次の3つの場面で登場することになります。

  • ①購入(売却)の依頼を受けた仲介業者が買主(売主)に対して、「インスペクション業者をあっせんできるかどうか」を伝えるようになります
  • ②インスペクションした場合、重要事項説明時に調査結果が買主に報告されます
  • ③インスペクションした場合、売買契約時に売主・買主の両者が建物状況を確認します

インスペクションの実施自体は義務ではない点に注意

なお、新たに始まる制度は、どの取引においても一律にインスペクションを実施させるものではありません。インスペクションの実施自体は義務ではないということです。

ですので、不動産会社がインスペクションに対応していなければ、「当社は建物調査をする業者をあっせんできません」と伝えられるだけです。対応できる不動産屋を通じて取引をしても、インスペクションを行うかどうかは買主(売主)の判断に委ねられます。

安全な家を適正価格で買うことができ、資産価値を維持するメリットもある

インスペクションを行う買主のメリットは、なにより建物の状況を事前に知った上で安全に住宅購入できることです。

不具合が見つかった場合には補修費用分を値下げしてもらうなど、売買価格の調整が行われることで実態に見合った価格で購入できることもあります。また、建物調査をクリアした物件を買うということは、一定の品質があるということです。

将来、自宅を売却する際にも「中古だから」という理由だけで大きく値下がりすることを防げます。資産価値の維持に役立つのですね。さらに、売買契約時に売主と買主の間で、建物の現況をお互い確認した上で売買するため、後から建物の欠陥が見つかるトラブルを未然に防ぐ効果も期待されます。

費用は数万円~10万円程度。今は買主の負担になるケースが多い

気になる費用については、家の広さや検査項目などに応じて、数万円~10万円程度と幅があります。

その費用は売主・買主どちらが負担しても構いません。ただ、現状ではインスペクション自体がまだ浸透しておらず、売主が調査費用を負担するケースは極めて少ない状況です。場合によっては、インスペクションを行うこと自体、売主から拒否されることもあるでしょう。

ただ、今後インスペクションが買主に安心感を与えることが売主に認知されれば、売主負担のケースも増えていく可能性はあります。例えば、国が安心な中古住宅にお墨付きを与える「安心R住宅」は、時を同じくして(2018年4月から)始まります。安全R住宅はインスペクションに合格することが一つの要件です。

これら制度がきちんと認知されれば、家の状態の良さをアピールしたい売主が自らインスペクションを実施して売り出すケースも増えていくでしょう。

中立なインスペクションを行う建築士か?検査者の資格を確認することが重要

誰がインスペクションをするのかは確認しておきたいところです。「インスペクション」という名のついたサービスは多くあります。インスペクター(検査する専門家)には、建築士や民間企業が認定する資格者、特に資格を持っていない人もいます。

その中で、今回の改正宅建業法が規定するインスペクションでは、「既存住宅状況調査技術者」を取得した建築士に限定しています。一定の講習を受けた建築士に絞っているのは、国として、中立公平なインスペクションを実施することを強く求めているためです。

例えば悪質なケースであれば、物件を売りたいために検査結果を見栄えよく改ざんするよう不動産会社からインスペクターに依頼することが考えられます。逆に、修繕工事を受注したいために、結果をあえて悪くみせ、是正工事を促すことも考えられます。

インスペクションが先行している海外でもこのような利益相反事例は少なくありません。依頼する場合には、インスペクターが「既存住宅状況調査技術者」の資格を持っているかどうかは必ず確認しましょう。

インスペクションは建物状況を把握するものであり「欠陥の有無」は保証しない

注意点として、インスペクションは建物に欠陥があるかないかを「保証」しないということです。住宅性能を判定することも、欠陥の原因を突き止めることも求められません。国交省の定めるガイドラインによれば、劣化事象などを「把握」することが目的とされます。

背景には、調査の方法として目視・通水・触診や建物に傷をつけない機器を用いた「非破壊検査」に頼らざるを得ないことがあります。

また、調査する対象も基礎・壁・柱といった「構造耐力上主要な部分」や、屋根・外壁・開口部など「雨水の浸入を防止する部分」に限られます。簡単に動かせない家具があれば、その裏に隠れている部分の検査も行わず、検査未実施の個所を指摘することに留まります。

このように、建物の重要部分に限定して、できる範囲で状況を明らかにするものであることを理解しておきましょう。

インスペクションに合格した家だけ加入できる瑕疵保険で見落としをカバー

インスペクションをしても建物の品質が保証されないといわれれば不安ですね。そのために用意されているのが中古住宅版の瑕疵保険である「既存住宅売買瑕疵保険」です。この保険は、建物調査の結果、不具合が見つからなかった(もしくは指摘のあった不具合を修繕した)場合に限り加入できます。

インスペクションは完璧ではないので、見落としがあった場合にそれをカバーするのがこの瑕疵保険ということです(最大1,000万円まで補償)。なお、不動産会社に建物調査を依頼する場合には、「瑕疵保険の加入も考えているので、それに見合ったインスペクションをお願いします」と伝えておきましょう。

先ほど述べたように、インスペクションといっても実施する会社によってそのやり方に違いがあります。詳細は省きますが、瑕疵保険に入るためには一定の基準に従った建物調査が求められます。瑕疵保険に入るために、再びインスペクションを行う二度手間とならないように注意ください。

今後は築年数より建物状況を重視する流れに?品質の良い中古物件を選びたい

これまで日本では、建物の内情を知ることなく、まだまだ使える家を取り壊しては新築することを繰り返してきました。

事実、日本での住宅寿命(新築してから取り壊すまでの期間)が30年程度といわれています。欧米はその倍以上の期間、同じ家を使い続けています。日本でもインスペクションが根付けば、中古住宅もメンテナンスすれば長く使えるという意識に変わっていくことが期待できます。

そうなれば、築年数によらずに家の中身を積極的に評価する取引がなされるようになるでしょう。大切に使った家は高く売れ、品質の悪い中古は住宅市場から駆逐されるということです。

結果として、残っていくのは優良な中古住宅となり、多くの人が安心して中古住宅の売買を行える環境が生まれます。安全な中古市場を形作る第一歩が、4月から始まるインスペクションなのです。これから中古住宅を購入する方は、ぜひインスペクションを活用して、品質の良い家を選んでくださいね。

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